移住の理想と現実 ⑧
” 以上に述べた言語バリアやビジネスの習慣の相違が、オーストラリアでの仕事や生活において移住者が直面する現実的な問題である一方で、移住者は人種差別という心理的バリアにも直面する。
程度の差はあるものの、ほぼすべてのインタビュイーの間で日常生活において人種差別あるいはそれに近い経験を持っていた。
フリーランスの美容師を営む三十歳代の女性は、彼女が経験した差別意識について次のように語っている。
クイーンズランドって他の州に比べてひどいねー。アジア人嫌いって人多いでしょう。
ブリスベン、特にシティとスプリングヒルの(大手スーパー名)、ひどいねー。私文句言ったもん、「マネージャー出せ」ってね。
アジア人、日本人に対する態度がぜんぜん違う。美容師でサロンで働いてたときも、「こんにちは」って(顧客のもとに)行くと、(自分を)ちらっと見て「別の人にして」って。
まあアジア人だからそうなったとは言えないけど、やっぱりそうだったと思うよ、あれは。
この事例に見られるように、日本人移住者が経験している人種差別の多くは、「アジア系」への蔑視や差別に基づくものである。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p190)
私個人では同様の事案に遭遇した経験はないので、事実を読んで知ることになりましたが、
世界をリードするほどの多国籍、多民族で国家が形成されているオーストラリアでも、差別は例外ではないということですね。
短期滞在と異なり、長期滞在、移住となると知り合う人の数も格段に増えるので、その中には極端な人も含まれてきてしまうということであるのかもしれません。