オーストラリアの寡占経済 ①
” オーストラリアのアンドリュー・リー労働党財務補佐官が、5月末にメルボルンで興味深い講演をしていた。
オーストラリアのさまざまな産業界ではびこる寡占状況についてだ。
彼の主張を聞くと、高価格・高コスト体質があらゆる業界に浸透したこの国の土壌に気付かされる。
同補佐官の講演を、ウエスト・オーストラリアン紙などが報じていた。
オーストラリア国立大学で教べんを取った経験を持つ同補佐官によると「オーストラリア史上で、プライベートジェットを保有する富裕層と、日々の生活にも窮する貧困層が現在ほど多い時代はこれまでなかった」という。
その主因として挙げているのが、産業界の寡占状況の深刻さである。
■大手4社のシェアは41%
同補佐官の独自調査によると、例えばある業界で大手4社が3分の1以上の市場シェアを占めることが寡占状況だと定義すると、オーストラリアの半分以上の業界がそれに当てはまるという。
また、オーストラリアの時価総額トップ10社(ANZ銀、コモンウェルス銀、NAB銀、ウェストパック銀、ウェスファーマーズ、ウールワース、AMP、オーストラリアン・スーパー、リオ・ティント、BHPビリトン)の時価総額合計は、国内総生産(GDP)の5分の1に相当する。
国内の400分野にわたる業界の各大手4社の平均シェアは41%に上る。主要20分野に限ってもこの割合は変わらず、約43%だという。
例えば貧富の格差が激しい米国でも、業界大手4社が占める平均シェアは約33%なので、オーストラリアは名うての寡占市場である。
米国と比べてオーストラリアの市場寡占度が高い典型的部門が酒類小売りで、米国は10%なのに対して、オーストラリアは78%にも上る。
そのほか、スーパーマーケット(米国は31%、豪州は91%)、ガソリン販売(米国14%、豪州70%)、ダンボール製造(米36%、豪州88%)などがある。
またドラッグストア、銀行、鉄鉱などのマイニング、飲料、通信、国内旅行などの部門が特に寡占状況が激しい。
一方で、競争原理が最も働いている健全な市場は、自動車ディーラー、ヘアドレッサー、歯科医、弁護士事務所だという。
市場で競争原理が脅かされているということは、大手が多大な競争力を利用し、消費者がその割を食うということだろう。
デロイトの調査によると、例えばスーパーマーケットで寡占がさらに進んだ2010~12年の間、コールズの販売商品ブランド数は11%減少した。
消費者の選択肢が狭まり、新規参入企業数が減る一方で、大手は価格を下げずに過剰な利益を上げられたことを示している。
これは業界の効率性を失わせ、サービスの質の低下や、貧富の格差拡大も助長することになる。”(出典:NNA.ASIA、一部編集)
小売業に見られる業種業態毎に2〜3社に有力テナントが限られる状況は
小売業固有の傾向に非ず、一般的傾向であることを示す講演内容で、ランチェスター戦略が典型的に、というのか、
一旦、勝ち抜けると、(勝ち組に過度に富が)集中する特質があるようです。
サービス云々といった話しは「オーストラリアあるある」的な感じでよく聞かれる話しですが、その背景も説明されていますね。
講演内容の抜粋が、長いので2回に分けます。
オーストラリア ライフスタイル & ビジネス 研究所
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