オーストラリアの寡占経済 ②
” ■ACCCの限界
オーストラリアには、産業界を監督する立場にある独立機関の競争消費者委員会(ACCC)がある。
だが中小企業のビジネス界では、「ACCCは忠告ばかりで実行できない弱腰機関」という失望感が強い。
その背景には、ACCCが、競争消費者法で規定する取引慣行の阻害を証明する十分な証拠を得にくいためだと言われている。
例えばスーパーマーケットで、ACCCがウールワースとコールズの両巨頭に対する山のような苦情を受けて連邦裁に持ち込むケースは近年に複数件あったが、
競争法の「不当行為(unconscionable conduct)」の定義が困難で立証が難しいのだという。
たとえ有罪になっても、ある程度の罰金支払いだけで、構造を変える根本的な解決にならないケースが多いためだ。
5月末までの3週間だけでも、牛乳加工業者の牛乳買い取り価格の引き下げのために、東部の酪農家の収入が大幅に落ち込んだり、
洗濯用洗剤大手のコルゲート・パルモリブが価格を不当につり上げたとして1,800万豪ドル(約14億4,000万円)の罰金を科せられたり、
セメント・オーストラリアが飛散灰販売の独禁法違反で1,860万豪ドルの罰金を科せられた――などのケースがあった。
これらはまさに寡占状況が生んだ多くの一例に過ぎない。
■メディアも寡占
さて実は、今回の寡占状況を憂えたウエスト・オーストラリアン紙もまた、同じ穴のムジナである。
親会社のセブンウエストが最近、ニューズコープ傘下のパースの日曜紙、サンデータイムズ紙を買収すると表明したことだ。
セブンはパースで、最大シェアを持つテレビ局のセブンネットワークを既に保有しており、パースの新聞とテレビの両メディアで圧倒的なシェアを握ることになる。
ACCCは現在この件について調査を進めているが、おそらく認められるだろう。”(出典:NNA.ASIA)
消費者に選択の自由がない、或いは選択の幅を狭められるといったことは、歓迎せざる状況であり、
供給側も外資との競争となった場合、駆逐されることなく優位性を発揮出来るかといった問題が指摘されますが、
後者に関しては、現地(オーストラリア)で耳にした話しところでは、「地元(オーストラリア)製品を選ぶ(買う)」といった意識が消費者にあるようで、
価格訴求力は一例となりますが、寡占がはびこる背景には法の限界と共に、オーストラリア人のマインド面が影響している面もあるようです。
オーストラリア ライフスタイル & ビジネス 研究所
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