俳優に、映画監督に、ときにミュージシャンとして多彩な才能を発揮されている竹中直人さんの『役者は下手なほうがいい』を読了.-
人間「竹中直人」に、俳優「竹中直人」・・
竹中直人さんの
” 小学生の頃は漫画家に憧れていました。漫画のキャラクターの模写をすることで、徐々に同級生の輪に入っていけるようになりました。
高校生になって個性的な先生のモノマネをするようになり、自分ではない人格になることに目覚めていったんです。
とにかくコンプレックスのかたまりだったので、誰かのキャラクター、人格を借りないと生きていけない、
相当変わったやつだったと思います(笑)。”(p10)
といった生い立ちに、
” 自分に自信がないから、何か変なことをやってごまかす。変なことをすることで過剰な照れから逃げていた。
自分ではそれほど面白いとは思っていなかったけれど、みんなが笑ってくれる。
ぼくはそういう状況が嬉しくもあり、不安でもあった。”(p66)
という内面と向き合った葛藤の吐露に・・
” 感動したのは、萩原健一さんとの共演。ショーケンですよ。ショーケン!琵琶湖に一九三六年当時のセットを作っての当日。
セットの片隅に座って琵琶湖をながめていると遠くのほう「竹中さーん」と声が聞こえてきた。
振り返ると、ショーケンがぼくに向かって小走りでやってくるではないですか!?ぼくは心の中で叫びました。
「うわ、ショーケンが俺に近づいてくる!」。すると萩原さんはいきなり「見てるよ、アートネイチャー」とぼくに言った。
当時ぼくはアデランスのCMに出ていました。「萩原さん、それは違います。アデランスです」。
すると萩原さんは、「アートネイチャーだろう?」。ぼくは「いや、アデランスですね」「アートネイチャーだろう?」
「いや、本人が言ってるんですからアデランスですよ」「いや、アートネイチャーだよ!」。これが萩原さんとの初めての会話でした。”(p77)
といった共演者との思い出話し(笑)に・・
” 「役づくり」という言葉が本当に嫌いです。役者はただ現場にいけばいい。そのせいで前後の文脈が分からないまま、、
「なんでこんなセリフを言っているんだろう?」と思ったりする事もありますが、「ま、いいか」ですね(笑)。”(p124)
といった演技論まで、多面的に竹中直人さんの内側、人がらに触れることの出来る一冊でした。
「竹中直人」という個性
竹中直人さんといえば、昨春(2016年)一度、直にその存在感を体感出来る機会に恵まれ、
その時も何となく実感出来たことでしたが、
本書でもキャリアのキーポイントになった初監督作品の『無能の人』を鑑賞した時、
「うわっ、、」なんて共感し難い感覚を抱き、個別の作品では魅了された感覚は持ってなかったものの
直にした時に感じた「竹中直人」なる個性というのか、存在感に「これだよ、これっ!」と上手く言語化出来ないものの
本書でもやはりそれ(=惹き寄せられる感覚)を感じさせられた一冊でした ^^