数学者で国立情報学研究所教授、国立社会共有知研究センター長などの肩書きを持ち、著書も多い
新井紀子さんの『AI vs. 教科書が読めない子どもたち 』を読了。
先日参加した東京大地塾で佐藤優先生が、
今一番のオススメといった形での紹介があり、興味を持っての購入。
人工知能が実現出来ること(出来ないこと)
本書を読むまで、AI(人工知能)について日進月歩で進化を遂げていて、
シンギュラリティと称される人間の脳を超える日も迫っているのかと思いきや
本書を開いての冒頭、「はじめに ー 私の未来予想図」で、新井紀子さんは
” AIは神に代わって人類にユートピアをもたらすことはないし、その一部が人智を超えて人類を滅ぼしたりすることもありません、当面は。
当面はと言うのは、少なくともこの本を手に取ってくださったみなさんや、みなさんのお子さんの世代の方々の目の黒いうちにはということですが、
AIやAIを搭載したロボットが人間の仕事をすべて肩代わりするという未来はやって来ません。”(位置 No.17/電子書籍のページ数)
と断言。
それは
” AIはコンピュータであり、コンピュータは計算機であり、計算機は計算しかできない。
それを知っていれば、ロボットが人間の仕事をすべて引き受けてくれたり、人工知能が意思を持ち、自己生存のために人類を攻撃したりするといった考え方が、妄想に過ぎないことは明らかです。”(No.17-27)
但し、
” 人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています。つまり、AIは神や征服者にはならないけれど、人間の強力なライバルになる実力は、十分に培ってきているのです。
「東ロボくん」は、東大に合格できませんが、MARCHレベルの有名私大には合格できる偏差値に達しています。”(位置 No.27-37)
東ロボくんとは、新井紀子さんが東大合格を目指して我が子のように育てているとの人工知能のことで、
MARCHとは明治、青山学院、立教、中央、法政の各大学を一まとめにした略称。
と、最初に結論が示され、本編の中で東ロボくん開発に前後した経緯の中で明らかになった事実に、
後半(第3章 教科書が読めない ー 全国読解力調査〜)では、新井紀子さんが研究、開発を進める過程で
” 私は、それまで誰も疑問を持っていなかった「誰もが教科書の記述は理解できるはず」という前提に疑問を持ったのです。”(位置 No. 2327)
という懸念からつまびらかにされていく、深刻な学生の学力低下の現実(=中高生の読解力があまりに低い実態を訴えている理由は、この子たちが中学校を卒業するまでに、なんとしてでも教科書を読めるようにしないと、
少子化に突き進んでいるのに移民は頑なに受け入れたくないという日本は、とんでもないことになるからです。/位置No.2815-2823)、、。
人工知能がもたらす近未来
本書で人工知能に関する基礎理解に、蓋然性の高い近未来に、さまざまな認識を新たにさせられ、学び多き一冊でした。
人工知能が力を持ってくる社会への処方箋は
” AI代替されない人材とはどのような能力を持った人なのでしょう。それは、意味を理解する能力です。
第2章で詳しく見てきたとおり、AIは意味を理解しないからです。”(位置 No.2859)
と、そのことを職業で示した表なども掲載されており、
佐藤優先生推奨のとおり、多くの方にとって有益な著書であるように思います ^^