作家 五木寛之さんの『作家のおしごと』を読了。
(2019年)1月に開催された👇
本書の刊行記念トークイベントの対象書籍として入手していたもの。
カテゴリー別に振り返る五木寛之史
書店に立ち寄って著作の数多さを実感させられずにはいられない五木寛之さんをして
” 仕事となれば、苦しいこともあり、思うようにならないこともある。それでもいつか自分の好きなように一冊の本を作りたいという夢は、心のどこかに抱いているものです。
この『作家のおしごと』は、そんな勝手な夢を現実のものとすることができた思いがけない一冊でした。”(p320)
との自負が綴られている快心作で、
第一部/モノローグ
1 作家のおしごとについて
2 ぼくの目指してきたもの
3 長く続ける中で考えてきたこと
第二部/実践編
1 対談について
2 あそび(ギャンブル)について
3 歌・作詞について
4 解説について
5 インタビュー・写真について
6 コラム(雑文)・連載・思い出の記について
7 「あとがき」について
8 講演について
9 ロシア文学について
10 紀行について
という目次立てのもと、
各項目に沿って五木寛之さんのお考えなり、綴ってきた文章なりが、ライフワーク的に迫ることが出来る一冊であるものと。
縛られることなき表現の場、ジャンル・・
冒頭の「エピローグ」で、
” 鵺的な存在でありたい、と以前何かに書いたことがあります。ヌエとは、顔が猿で胴体はタヌキ、虎の手足を持ちながら、尾は蛇といった得体の知れない妖怪です。
そういうごちゃ混ぜの存在でありたいとひそかに思ってきました。建前は一応小説家になっているけれど、対談や講演もし、テレビの出演やラジオの仕事もする。
新聞に雑文の連載を持っていたり、歌謡曲を作ったり、そうして何かを世間に投げ返す。
それはいうなれば、芸人の仕事ですね。だからぼくは文学者といいません。自分のことを文芸者というのです。いわば文の芸者ですね。”(p19)
という五木寛之さんご自身が貫かれてきたスタンスが明示され、
本書に収録されているエピソード、守備範囲は幅広いですが、羨ましかったのは、
” ミック・ジャガーやキース・リチャーズ、モハメド・アリなどとの対談もやります。”(p4-5)
と、実際にMick Jagger:ミック・ジャガー(「読書家としてのミック・ジャガー」p211〜)に
” ロックの人、という固定観念がすっかりこわれて、好奇心の旺盛な育ちのいい少年のように思われたのである。”(p220)
Muhammad Ali:モハメド・アリ(「モハメド・アリの片影」p222〜)
” 私がそのとき会ったのは、ひどくデリケートな一人の人間だった。 (p228)”
との取材時のエピソードも収録されていて、二人の実像に触れるかの感覚を得られ、興味深かったです。
また、本書の目玉として1983年に行われた(五木寛之さんと)村上春樹さんとの幻とされる対談も収録されており、
長きに渡って時代と並走してきた五木寛之さんのファンならずとも、食指が動く内容で構成されている一冊であると思います。