『将棋を指す子が伸びる理由』出版記念トーク&サイン会に、羽生善治九段が登壇されることに興味を持って参加。
最初の30分弱は著者 安次嶺隆幸さんと出版社の小学館クリエイティブ編集担当者とのお二人による進行。
安次嶺隆幸さんの33年に及ぶ教員経験に基づき「人の為に惜しまず、拍手した人は、やがて自分に戻ってくる」というお話しに、
本にも書かれてある将棋界への未来を担う藤井聡太七段の凄さ(=2019年の目標を「今の自分に65%勝てる強さを目指す」とした点に、昨年の自分が基盤にあることから掲げられる目標)などについて言及。
すぱっと明瞭なる羽生語録
その後、会場後方に控えていた羽生善治九段が登壇され、企画も交え、対談形式に。
以下、書き取れた範囲の中から抜粋すると・・
・人と人のコミュニケーションは話すことにあるが、将棋を指すこともコミュニケーションの側面がある。
・将棋、基本を覚えること大事。
・「学ぶは真似る」。安次嶺隆幸さんが教鞭(及ぶ将棋部顧問)を取られていた暁星小学校に羽生善治九段が往訪され、真剣に学生との対局に取り組まれ、(手を抜いてもよいところ)自分の姿勢を見せることでプロから学ぶ姿勢を見せたことを安次嶺隆幸さんが賞賛。
・安次嶺隆幸さんが、片付けの大事さを説かれ、本の中でも重要テーマであったそうですが、羽生善治さんに片付け名人を問うたところ、森下卓九段の名を挙げられ、自宅を訪問した際、「本当に住んでいるのか」というくらい塵一つない綺麗さであったそうな。
一方、質問した安次嶺隆幸さんは羽生善治九段を挙げられていました。将棋のタイトル戦で勝った方が駒の片付けをされる取り決めになっているそうで、見事に片付けされるそうな。
後半は質疑応答形式となり、「どうすれば集中出来るようになりますか?」との問いに、
羽生善治九段は、
もともと集中力を持っていない人はいない。子どもの頃、夢中になって遊んでいた時を例に挙げられ、
もともとあるものをどれだけ伸ばしていけるか?関心持てるものを如何に伸ばせるか?(やらなくていけないものに応用させていく)
安次嶺隆幸さんは、
「1日1時間、20年間」という言葉を紹介され、無理なく継続できることの大切さをお話しされていました。
また、羽生善治さんに決断に関して質問が飛び、
色んな角度から見られること大事。相手の人から見たらという視点で捉えられるか。
喜怒哀楽、不安、恐怖に向き合うことに、中立的な視点について言及されていました。
「再び対戦してみたい棋士は?」との質問に、
羽生善治九段は故升田幸三実力制第四代名人の名を挙げられ、囲碁での顔合わせはあったそうですが、将棋での対局はなく、
升田幸三実力制第四代名人の今までになかった指し方に挑戦、時代の先を行っていた等々の姿勢を評価され、ご自身もあやかりたいとのことでした。
熟慮から紡ぎ出された言葉の数々
羽生善治九段はかつて著書を2、3冊ほど読んでいたように思い、平易な言葉遣いが印象に残っていましたが、
実際、目の当たりにした羽生善治九段から飛び出してくる言葉も脳から抽出された考えが分かりやすく伝えられ、
事前に抱いていた先入観とギャップを感じることは有りませんでした。
年間いかほどの対局をされているのか承知していませんが、「一番楽しい時間は?」との問いに、
「何もしていない時。動物のカピバラっていいなと思う。」
なる回答に ^^ 日ごろ熟慮に脳内を支配されていることがうかがえた印象的な受け答えでした。
このように一般向けの催しにご登壇されることも稀有な機会であったろうと、直接的なやり取りには至らずも時代を築いた棋士との思い出に残るであろうひと時でした。