(2019年)4月、世界初、全盲セーラーで太平洋横断に成功した岩本光弘さんの著書
『見えないからこそ見えた光 絶望を希望に変える生き方』を読了。
同横断のゴールインの模様をたまたま点けたTV中継で知り、「(お名前が頭に入ってなかったため)あの時の人かぁ」と、
前回、航海半ばにして断念し相当なバッシングを社会から浴びていた時(6年前)を思い出し、
その間の葛藤に、岩本光弘さんへの人がら等々、いろいろと興味が膨らんでいった時間経過。
九死に一生を得て
本書は、
” 私は目が全く見えません。そんな私は2019年2月に成功すれば世界初となるブラインドセーラーによる太平洋横断(アメリカ西海岸〜日本)にチャレンジします。(※当チーム調べ)”(p002)
という偉業達成となる航海前に出版された著書で、件の未遂となったしまった初回の航海について
” 私に第六感が与えられず、クジラにぶつかってヨットがダメージを受けたということを感じていなかったら、私も辛坊さん同様、熟睡して、そのままエオラス(註:ヨット)と共に太平洋の底に沈んでいたことでしょう。”(p172)
と九死に一生を得るギリギリの状況ほか、短く端的に、事の発端から帰結までしっかり説明され、
ハッピーエンドを迎えることになる2回目の挑戦についても
” 周囲の言葉に励まされ、少しずつ心の整理をしていくなかで、見えなくなったことに意味があるように、
今回クジラがぶつかったことにも何か意味があるのじゃないかと考えるようになりました。
・・中略・・
挑戦することをあきらめないでください。生きているというだけで十分素晴らしいのです。
命を失いかけた経験をしたからこそ、それがわかります。
生きていれば何度でもチャレンジできます。あきらめないで。
このことを若い方々に伝えたい。どの瞬間にも意味があります。そのことが私を前進させてくれます。”(p181/p182)
と心の動きを辿れる記述が載せられています。
ほとばしる並々ならぬチャレンジへの思い
驚きであったのは、2回目の航海に選んだパートナーのダグラス・スミスさんが
” ダグは訓練や練習もかなり積んでいます。ただ彼はまだ遠距離航海において初心者という域を超えていないところがあります。
前回もそうですが、私のほうが外洋経験があります。正直、パートナーはプロの人のほうが良かったのか・・・ と揺れ動いた時もありました。
だけれども、健常者が障がい者を連れての挑戦ではなく、健常者と障がい者の垣根を越えたチャレンジをしたい気持ちが強く、ダグとの航海を決心することができました。”(p185)
と全盲であることもチャレンジへの大いなるハードルになっていながら、更にパートナーも想いを優先した選択をされていること。
この部分は本でもよく描かれている部分ですが、何度も全盲の方の言葉、思いが載せられた本であることに驚かされます。
経験談から伝わってくる凄み
ライフコーチの顔をお持ちであることから、
” 人生はそんなに長くありません。将来に対して恐怖を抱いて怯えて生きるより、目標に向かって、今を一生懸命ワクワクして生きてみたいものです。”(p096)
” 大きな決断をして実行する過程は、大きな荒波もついてくるものです。何か大きな決断の前に悩んでいる人がいたら、どうか私のエピソードを思い出していただき、
大きな波のあとには穏やかな凪が必ず訪れるということを忘れないでほしいと思います。”(p115)
と人生への言及、読者へのエールも散りばめられており、
” 目が見えなくなった16歳の頃、こんな人生なんかつまらない。どうしてこの世に生まれてきたんだろうと思っていました。
・・中略・・
真っ暗だった心に明かりが灯されるようになったのです。
見えないからこそ見えてくるものがあるということに気づき、環境が自分を幸せにしてくれるのではなく、
どのような環境にあっても自分の心の持ち方で幸せになれるということを知ることができたのです。”(p212-213)
という経緯に、それからに
全て著者 岩本光弘さんの経験談から導かれたお話しであるだけに、言葉に現実感が宿り大いに読者を勇気づける一冊です。