小説家 江國香織さんが、
” 読むことと書くことをめぐる散文集をつくりませんか “(p221)
との提案に応じて上梓された散文集『物語のなかとそと 江國香織散文集』を読了。
柴田元幸さん目当てであったものの、イベント参加記念に「江國香織さんの本の中から・・」と並べられた著書の中から本書に手が伸びていた経緯。
その時々の江國香織さんの感性に触れゆ
イベント時の対象書籍は『彼女たちの場合は』ながら、本書を選んだ結果を「正解」というように感じられたのは
タイトルに散文集とあるとおり、江國香織さんが様々な機会、媒体に寄稿された文が一冊にまとめられているため。
長編の場合、設定等で(自分に)ハマることもあれば、そうでない時もありますが、
本書では、制約なく多様に江國香織さんの世界観が文、状況から浮かび上がってきます。
例えば
” 自分と自分以外のものがつながったとき、世界はいきなりひらけます。これは本当です。
それまでは、だからじっとしていてもいいの。ただし目はちゃんとあけて、耳を澄ませて、体の感覚を鈍らせないように、
雨がふったら誰より先に気づくように、猫の毛と犬の毛の手ざわりの差を知るように、岩塩と天日塩の味のちがいを歴然と知るように。
何もかも自分で感じること。”(p46)
と、ご自身の経験談に基づく人生訓的なトピックがあれば、
” 自分が小説家になるとは思っていなかった私に、少女のような寂聴さんが、「物を書くにはストリップする度胸が必要なのよ」とおっしゃった。ぞくりとする言葉だ。
でも、ぼんやりとした、要領を得ない娘だった私は、その言葉を記憶していはいるが深く心に刻むことはせず、稲穂の緑とホタル、滋実深い鮎の味ばかりを全身に刻んで家に帰った。”(p65)
に、
” 本を読んでいるあいだ、私はその物語のなかにいます。そして、私の仕事は小説を書くことですから、仕事をしているあいだ、私はその小説のなかにいます。
つまり、現実を生きている時間より、物語のなかにいる時間の方がはるかにながい。もう、ずっとそうです。”(p134-135)
という点が線で繋がるような読み方も出来、江國香織さんご自身が伝わってくる感じが心地良かったです。
さらっと読み上げられるひと作品あたりの文字量で、内容も読みやすく書かれていて、
繊細な感性の持ち主であることを随所に感じながら、江國香織さんの世界観を時に共感しながら感じ良く浸ることが出来ました〜