先週、読み始め記⬇︎をアップロードしていた
門田隆将さんの『この命、義に捧ぐ』を読了。
義を貫いた生きざま
(中間記後)第三章から話しが進みゆくに従って徐々に
” このプロジェクトは、もともと「終戦時の恩義を返したい」という根本の思いから発している。
そして、「台湾を助けたい」という明石や台湾人たる李鉎源や李麒麟の思いがひとつになって動き出したものである。”(p129)
根本博陸軍中将の台湾渡航から台湾滞在時の本書の本筋部分に移行。
その根っこには
” 根本には、蒋介石に対して終戦時の恩がある。それは、四万人の邦人と三十五万将兵を守り、故国日本へ帰してくれたことと、
カイロ会談において、「天皇制については日本国民の決定に委ねるべきだ」と主張し、これを守ってくれたという二つの恩義にほかならない。”(p103)
という経緯あってのこと。
台湾行きに際しては、
” 根本さんがとった行動は、壮烈なものでした。わずか二十六トンの小さな漁船に乗って密航してまで恩義に報いようとした “(p364)
と生死が掛かり、当時の内情は、
” 海を渡るということは大変な危険を伴うだろう。しかし、共産化され、台湾がさらにその手に落ちることは、日本に及ぼす影響も大きく、根本は見逃すことができなかった。”(p109)
と逼迫したもの。
” 敗走を重ねる国府軍の士気は、著しく衰えている。すでに内戦の大勢が決していることは誰の目にも明らかだった。わざわざ負け馬に乗る人間など中国にいない。
しかし、この日本人たちは、かつての敵である自分たちを助けるために、わざわざ海を越えてやって来てくれたのである。”(p146)
という状況下、恩義に報いようと万難を排して義を貫いた根本博陸軍中将、帯同した人たち、
それらを側面で支えた人たちの知られざるストーリーが、門田隆将さんの綿密が取材に基づいて熱く綴られています。
台湾と日本に脈打つ絆
本書の読書を通じて台湾の歴史について初めて正対したことを実感させられ、
台湾で根本博陸軍中将の功績は
” 国防部はすべてを完全に消し去っていたのだ。あの戦争への日本人の関与とは、それほど国防部にとって、都合が悪かったのである。”(p301)
と一時は封印された状態であったものの、
門田隆将さんの本書を書き上げる過程での取材等から、徐々に真実が浮かび上がって来た様子。
目に見えぬ(=知られざる)部分がありながらも、日台関係について実感を強くしたのは、
門田隆将さんが「文庫版あとがき」で
“人口わずか二千三百万人に過ぎない台湾が、当時のレートで世界一にあたる「二百億円」を超える義援金を送ってくれたのである。”(p374)
と言及されていた箇所。
なかなかTVをはじめとするマスメディアで台湾に関する報道に触れる機会は少ないように感じていますが、
根本博陸軍中将の生きざまから浮き彫りとなった二国間関係に血の通った絆が海を隔てて脈打っていることを深く学ばされ、自分自身の頭にある地球儀の姿を改めさせられた思いもしました。