(2019年)5月、21年に及ぶ現役生活にピリオドを打った上原浩治さんの
『OVER 結果と向き合う勇気』を読了。
本書の発売記念トークイベント⬇︎の際、
「俺の野球人生、こんな(薄さ)ではない」といった発言がありましたが、
引退記者会見を経て、
” 自分では140キロ投げているつもりでも、球速表示は135キロだった。初めて対戦する「自分を知らない」バッターに打たれた。”(p10)
と、引退の決断に至るまでの心の葛藤に、
” 僕が浪人生の頃(決して裕福ではなかった上原家の家計を圧迫させまいと、夜はバイトをし、昼の授業とトレーニングに臨んでいた「19」歳の日々は、なかなかしんどいものだった)の苦しかった記憶を忘れないためにと望んだ、思い入れの強い番号だった。”(p37)
代名詞でもある背番号19に込められた思いに、
” 気持ちを込めた球、相手に対して「絶対に打たれるものか」と思いながら投げる、魂を吹き込んだボール。それもひとつの球種だと思っている。”(p136)
強豪校ではない野球部の補欠から、日米(NPB & MLB)両国の球界で頂点まで上り詰めることの原動力となった雑草魂@氣力をはじめ
全238ページの中で、概括的に上原浩治選手のキャリア、その節目での当時の心情が綴られています。
プロとして結果を出すために
その中で、印象に残ったのは、
” 合理的なトレーニングが正解であるならば、全員そのトレーニングをする。でも全員、結果が出るわけではないのが野球で、
僕は、野球には正解がないから、「シーズンが終わって一番結果を出したやつが正解」だと思っている。”(p110-111)
との前提から、華々しく日本球界(NPB)に登場してきたルーキーイヤー
” 入団1年目(この年の僕は、右も左もわからない中、がむしゃらに突き進んだ結果、20勝を挙げることができた)、
僕は一度もブルペンに入っていない。登板までの間で気になることはすべて、遠投することで微調整してきた “(p46)
と、実績がない状態ながら上原浩治さんが信じた方法を貫き、圧巻の数字を叩き出していたという事実。
そこには
” 自主トレからシーズンに入るまでのステップを記した。その中で「バッターとの感覚を見る期間」が大切だ、と書いたのは、
自分の投げる球が、バッターにどう映っているか、感じさせられているかを確認することがとても大事だからだ。”(p131)
と、自分自身にとって方法論/大事なことが見出されていたことに拠るもの。
ご自身で日米で残した通算記録の
” 100勝100セーブ100ホールドである。(結果だけを見ればなんとも中途半端である。”(p188)
と振り返られていますが、
記録以上に、現役時にファンに示した圧倒的な存在感の一因を垣間見た思いを抱きました。
自信を持ったことがほとんどない
また、
” 実は、僕は自信を持ったことがほとんどない。それはもちろん、野球に対しても同じだ。”(p184)
と、先発に或いはリリーフエースとしてマウンドを支配していた姿とは完全なるギャップでしたが、
本書を通じて随所に上原浩治さんの気概、考え方に触れられたことは、読む前と読んだ後に感じた大きな落差で読み応えを感じられた部分でした。
トークイベント時、再び本を出版されることに意欲的な様子でしたので、その際におっしゃられていた、ぶ厚い版(の本)が出版された際は、また読書のプロセスを楽しみたいと思います ^^