もっとも本が出版されたのは2012年4月で、落合博満さんが中日ドラゴンズの監督を退任されて、ご自身も一度球団から離れられた時期。
それなので、著書の肩書は「ドラゴンズ前ヘッドコーチ」、サブタイトルは「落合監督を支えた右腕の「見守る力」」となっています。
中日ドラゴンズが、セ・リーグを席捲していた頃
本書は
序章 投手会の夜
第一章 なぜしぶといチームは完成したのか
第二章 教えるより考えさせるコーチ術
第三章 落合博満監督の凄さ
第四章 参謀の心得
終章 選手への愛情は決してなくさない
という章立てに沿って、
” あの投手交代も、いつもと同じように、私が監督に進言したものだった。
その裏事情は、情報管理の徹底しているチームだったので、日本一のシーズンが終了し、緊張がゆるむ試合直後でも、監督と私と山井以外は誰も知らなかった。
もう一人、キャッチャーの谷繁元信は、理解していた部分もあった。”(p22-23)
チーム53年ぶりの日本一を吹き飛ばす勢いでクローズアップされることになった完全試合達成の可能性を残しての山井大介投手の降板劇に、
落合博満さんが、中日ドラゴンズから監督就任の要請を受け、森繁和さんが投手コーチとして契約段階で
” 「選手にいっさい手を上げてはならない」”(p40)
と厳命され、
” 鉄拳を封印しつつ若手をいかにまとめ、しぶといチームを作ったか。私なりの方法論をすべて書いたつもりである。”(p217)
と、常勝チームで振るわれたコーチングの振り返りに
” 「シゲ、オレもこらえるのに大変なときはあるんだよ。でもカメラの前では決して表情を変えてはいけない。
敵にこちらの心の動きを知られたら負けなんだよ。相手に有利な情報を漏らさないよう必死にこらえているよ」”(p130)
という中日ドラゴンズで一時代を築いた落合博満監督(就任8年間でリーグ優勝4回、日本一1回)を最も間近で支え、目撃し、体験したことの証言録に、
“「目いっぱい投げるストレートは、1球でいいからね。相手バッターはその速さを意識するし、ネクストバッターズサークルで見ている打者も、「こいつ、こんなストレートの威力がある」って思ってくれる。”(p97)
ときに技術論に、
更には
” さて、潰れない選手、伸びる選手には、共通点がある。特に投手の場合、この共通点は、大成するために絶対必要不可欠な条件だと感じる。
それは、孤独な時間をきちんと過ごせることだ。”(p172)
なるプロの世界で羽ばたけるか否かの分岐点を含め、 舞台裏の開示も点在する盛りだくさんの内容となっています。
伝説のつづきを、と願わされる舞台裏の記録
本の大半を読み進めた(〜読了)のは、
(2019年)年末の落合博満野球記念館への行き帰りの新幹線内で
当日の気分を盛り上げるのに一役買ってくれた一冊でもありましたが、
落合博満さんの特異性を強く感じられる内容で、森繁和さん曰く
” 言えるのは、落合監督に誘われたら、最優先で考えるということだ。”(p218)
とあり、
是非、また監督と(最側近)コーチのコンビで発揮した手腕をグラウンドで、出来たら阪神タイガースでと ^^現場復帰を強く望ませられた著書でした。