スタジオジブリ 鈴木敏夫プロデューサーと3名の禅僧との対談を軸に構成された『禅とジブリ』を読了。
SNSでサイン本が発売されていることを知り、
タイトルから抱く漠然とした興味も有り、入手していた経緯。
焦点あてるべきところ
読み始めてから、思っていたのと違い次元の高さのようなものを感じつつ
” 細川(註:細川晋輔和尚/龍雲寺住職) 仏教は、「悟り」という永遠の目標に向かって永遠に努力する。ということが大前提にあります。
でも、その努力とは、目の前のことをコツコツやっていくことでしかないんですよね。”(p52)
に、
“(細川)私たちは、明日の天気もわからないような存在です。けれども幸せを祈って生きていくことはできる、というのが仏教の根底にある思想なんです。
「不識」、つまりわからないことこそが人生なんです。むしろわかってしまったらおもしろくない。”(p56)
或いは
” (玄侑)(註:玄侑宗久和尚/作家・福聚寺住職)普通、我々をやっかいにさせるのは、過去の記憶と未来の思惑でしょう。
我々のような仕事では、過去の記憶を肯定して、作品化するわけじゃないですか。
作品を作らない人でも、過去はいろいろな作品を味わうときに調味料になりますけれど、その程度のものだと割り切って、「今」に徹する生き方ができれば最高ですよね。”(p164)
といった仏門の道に進まれ、本質に迫られたであろう知恵に、
“(鈴木) 僕、落語が好きなんですが、柳家小三治師匠の間は絶妙なんですよ。僕なんかも人前で話すとき、それはすごく意識しますね。皆さんに考える時間を与えることを。
細川 「時間」にも「人間」にも、「間」という字が入っているんですよね。そこに空想を膨らませるチャンスが生まれる。”(p75-76)
という短いやり取りの中にも深みを感じさせられ、読み応えを感じた箇所が点在しました。
「いま、ここ」に焦点合わされた生き方
ジブリ作品を殆ど視聴していながらも、禅の境地とジブリの世界観が掛け合わされた内容を内心期待していたところあり、
実際、対談前にジブリ作品を鑑賞した禅僧と鈴木敏夫プロデューサーとのやり取りもあり、見どころを端的に抑えられましたが
鈴木敏夫プロデューサーが
” 内容は、犬を含めて家族六人が好き勝手なことをやっているのに、気が付くと全員茶の間に集まっているという山田一家のたわいのない話。
山田一家の特徴は、それぞれが昨日のことを水に流し、明日のことは吹く風まかせ。
いつだって「いま、ここ」のことしか考えない。だけど、みんな、幸せだった ー 。”(p39)
と紹介されている『ホーホケキョ となりの山田くん』は、結果として本書の流れを汲んだ作品であろうと、興味大とさせられました ^^