小説家 百田尚樹さんが、昨年(2020年)末出版した話題のミステリー『野良犬の値段』を読了。
当初500ページに迫る分量に加え、ストーリーがしっかり頭に入るよう電車移動など雑念の入る状況を排除した形でのスケジュールを見計らっていましたが、
読み始めから早々ページをめくるスピードに加速感がつき、程なく事前の杞憂を吹き飛ばされ、在宅時間を最大限活用し快調に読了に至りました ^^
謎めき、そして突きつけられるメッセージ
話しは、突如インターネット空間に立ち上げられた謎の誘拐サイトに端を発し、
” これまで企業に身代金を要求する事件はいくつもあった。しかしそれらは役員や社員を誘拐している。
・・中略・・
しかし今回、誘拐された人物は全員ホームレスだと言われている。”(p85)
と奇異な設定の下、
” 今回の誘拐事件、噂によると人質はホームレスということですが、これはある意味、世の中で最も価値が低い人間と言えなくもない。
こんな言い方をするのは何ですが、金額を付けようがない人質というか ー」”(p103)
という投げかけに、身代金要求を突きつけられた先が
“「新聞やテレビは社会の公器と言われていますよね。民間企業でありながら、公的な存在に近い。
また日頃、社会正義を標榜し、人権や命の大切さを謳っている。
だからこそ、敢えて新聞社とテレビ局を標的にしたとは考えられないでしょうか。”(p103)
と絶妙。絡みつく背景は現実が想起される記述満載で・・(既述の通り)読み出したら止まらない状態に ^^
骨太エンターテインメント
これだけ原作がしっかりしていると、映画など映像化の動きも予想されますが、
矛先がマスコミに向けられ、シニカルでもあることから「どうなのかなぁ・・」というところですが、
本だけでも十二分に楽しませて頂き、「よくこんな設定思いつくなぁ」と感嘆させられ、痛快な設定&展開に存分に唸らされました。