ロックバンド クリープハイプのVocal & Guitar 尾崎世界観さんの小説で第164回 芥川賞候補作『母影』を読了。
先月(2021年2月)、
オンライン視聴したイベント⬆︎で入手していた著書。
カーテン向こう側の母
主人公の少女のお母さんが勤務する
“このお店はせまいから、探けんしてもつまらない。入ってすぐのところにテーブルと細長いイスがあって、その先にやわらかいカーテンにぐるっとかこまれたベッドが二つならんでる。
その向こうにはトイレがあって、その先の行き止まりはタオル置き場だった。
ちゃんとたたまれた新品のタオルは山になって、使って捨てたタオルはカゴの中で川になってた。
私はいつも手前のベッドにもぐりこんで、カーテンだけを見てる。
私が見てるカーテンはお母さんのベッドとつながってて、ときどきそこにお母さんの影が出るからだ。”(p3-4)
との情景描写で始まる本書は、
少女の母へ寄せる(想像力試される)想いに、切なさに、
“「お客さまにあるかどうかを聞かれた場合は、ちゃんと最後までお願いします。二回目からはある。これを徹底してください」
私は耳をすまして、お母さんの小さな返事を聞いた。
「ただし、こちらからいう必要はありません。あくまで、お客さまがあるかどうかを聞いてきた場合のみ、あります。
それと、ありそうでない、これが一番大事ですから。相手が警察かどうかもしっかり見極めて、ちょっとでも危ないと思ったらやらない」”(p30)
という一筋縄ではない設定も相まって、ストーリーが展開されていきます。
懐かしも今まで浸ったことないような・・
本を手にした時の「全124ページ、一気に読めそうだな」と、それに近い形で読了に至りましたが、
懐かしさを引っ張り出されるような、否、赤裸々な描写もあり、おませで独特な心地に浸らされながら進みゆくストーリーでありました〜