資源・エネルギー輸出、鉄鉱石が牽引し2020年度過去最高へ
” オーストラリア政府は29日、2020年度(20年7月~21年6月)の資源・エネルギー輸出額が過去最高の2,960億豪ドル(約24兆8,000億円)になるとの見通しを発表した。
最大の輸出先である中国とは外交関係が悪化しているが、同国の旺盛な需要が豪産鉄鉱石の価格を押し上げている。
豪産業・科学・エネルギー・資源省は、鉄鉱石の輸出を1360億豪ドルと見込む。19年度を31%上回る。
経済の正常化へインフラ投資を積み増す中国が需要をけん引する。同省によると、価格は9年ぶりの高値で推移している。
ブラジルで19年に鉱山ダムの決壊事故が発生し、同国の鉄鉱石生産はなお完全に回復していない。グローバルでみた供給制約も豪産鉄鉱石の価格上昇を招いた。
石炭輸出は伸び悩んでいる。製鉄に使う原料炭は同34%減の230億豪ドル、石炭火力発電で燃やす一般炭は同29%減の150億豪ドルと見通す。
温暖化ガスを多く排出する石炭火力発電への風当たりは強まっている。長期的に一般炭輸出の見通しは不透明だ。
同省の報告書は「25年度末までに(電気自動車に多く使われる)銅やニッケル、リチウムといった金属需要が一般炭の輸出落ち込みを補う」との見通しを示した。
石炭輸出の停滞は、中国との関係悪化も影を落とす。豪州は20年4月、新型コロナウイルスの発生源をめぐり、独立した調査を求めた。これに中国が反発し、豪州からの石炭輸入を実質的に制限した。
同省は「原料炭の価格は、中国の非公式な輸入規制に伴う損失からは回復しつつある」と分析する。
ただ「中国政府による豪産資源やエネルギーへの公式、非公式両面の輸入規制が今後の輸出を押し下げかねない」とも付け加えた。
新型コロナの調査などをきっかけとした中国の豪州に対する制裁は石炭ばかりではない。
20年5月、検疫上の理由で一部の豪産食肉の輸入をとめた。さらに大麦が不当に安いとして80%超の高関税を課した。
その後、中国の税関で豪産ロブスターの通関手続きが滞っていることも判明した。
中国税関総署の貿易統計で20年の豪州からの輸入をみると、大麦は前年比45%、冷凍牛肉は同22%それぞれ減少した。
輸入総額の約6割を占める鉄鉱石の輸入が16%増えたため、豪州からの輸入総額は4%減にとどまったが、最大市場から締め出された農家や生産者からは悲鳴が上がった。
21年3月26日には、中国商務省が豪州産ワインに反ダンピング(不当廉売)課税を適用することを正式に決めた。
すでに20年11月から輸入額の最大200%超の保証金を徴収していたが、今後5年間課税を続ける。
豪州のテハン貿易・観光・投資相は27日の記者会見で、豪産ワインへの制裁関税について「非常に残念」と述べた。
今後、世界貿易機関(WTO)への提訴を検討する方針を示した。
貿易を外交圧力の道具として使う中国の強権手法は相手国の反中世論を高めている。”(出典:日本経済新聞)
時折、意外な感じを伴うオーストラリア発のニュースで、本件もまた然りで、悩ましさが同時に伝わってくるような・・
上記はFacebookページ「オーストラリア ライフスタイル&ビジネス研究所」の2021年4月2日分の掲載記事です。
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