訪れる書店の幾つかの大々的なディスプレーに、サイン本販売機会も何回か訪れ、
帯の内容に興味を掻き立てられ購入。
やがて(いわゆる)直木賞候補作にもノミネートされ、
読前に更に興味を掻き立てられ、読み始め。
六話、唯一無二なる・・
本書には
ネオンテトラ
魔王の帰還
ピクニック
花うた
愛を適量
式日
の六篇が収録。
帯に踊るコピーの締めは、
> 愛おしい私たちの世界。
とあり、ほのぼの系のストーリーを勝手に思い描いていましたが・・
初孫(未希)に恵まれた祖母の心情が、
” 無意識の予感めいたものがあったのでしょうか。今、このひとときの幸福の頂点だと。観覧車の、束の間のてっぺんです。着いたと思った瞬間から残りの半周に向かって傾いてしまう、だったらここで自分の時間を止めてしまいたい ー “(p105「ピクニック」)
と描写された後、
” ー 未希が動かないの。”(p117)
という12ページ後、幸せの絶頂から180°=急直下ジェットコースター的展開から導かれるエンディングに、
” 自分の罪と向き合うのが怖いんですか?あなたに突き飛ばされて死んだ兄はもっとずっと怖かった思いますけど。”(p148「花うた」)
と、唯一存命の血縁を奪われてしまった被害者と収監されている加害者との往復書簡から関係が発展し、書き換えられていく未来に・・
稀有な設定に、想像力働かせられる当事者の心理、心情に、それらが六話に及び(それぞれの絶妙さ、深みが直木賞レベルと想起)
本書ならではの唯一無二な世界観で、読み手の心情を大いに揺さぶられる短篇集でありました〜