サメ映画好きでもなく、このジャンルでは「『ジョーズ』1本で十分でしょ」くらいに思っていたところ
各所で売り切れていく(本書)サイン本情報に触れていた最中、サイン本最後の一冊という状況↓に出くわし、
運命的なものを感じなくもなく・・「買ってみようかな」との心情に至り、購入。その時点でも、実際に読んでみるか否かは決めていませんでしたが、
いざ読み始めてみると
” 初代『ジョーズ』があくまでアニマル・パニック物に徹しつつ人食いザメの恐怖を描いたサメ映画だとするならば、『ジョーズ2』はモンスター・パニック物の系譜に連なる外連味を特徴としている。”(p027/『ジョーズ2』)
に、
” 製作総指揮は人呼んで「B級映画の帝王」ロジャー・コーマン。低予算早撮りの映画をひたすら製作し続けることで時流に乗って利益を上げ、富と名声を勝ち取った。
良くも悪くも娯楽産業の商業主義を体現したかのような人物だ。”(p031/『ジュラシックジョーズ』)
といった作品紹介に付随したサイドストーリーに引き込まれる部分多く、思いのほか楽しめ早々に約230ページの読了点に到達。
並々ならぬ熱量から上梓されたサメ映画録
なお、そもそも本書の位置付けは
” 俗に「サメ映画」と呼ばれる映像作品の数々を、1年と5ヶ月の執筆期間をかけ1冊にまとめた評論である。”(p003)
というもので、
その完成度に向けられた執念たるや
” 現存するサメ映画の中で最も古い作品のひとつが『WHITE DEATH』(1936)だ。本作のフィルムはオーストラリアの国立視聴覚アーカイブセンター「National Film & Sound Archive of Australia(NFSA)」が保有しており、
原則として製作者・出演者とその親族を除いた個人に対するコピー品の譲渡は行っていないとのことだが、この度本書の執筆のために NFSAと直接コンタクトを取り、例外的に、正規の手段でコピー品をお譲り頂いた。”(p229)
の部分に表れていると思いますが、
程度の差(本書帯の表現を引用すると「A級からトンデモまで」)こそあれ「サメ映画ってこんなにあるんだ〜」という100作を超えるその量に、
それをフォローした知的風ハットさんの熱量に脱帽させられる著書で、サメが主たるプロットに絡んでいる作品のガイドブックには唯一無二の書といえるでしょう。