ウクライナ人でニュース番組への出演や国会に参考人として招致され名を承知していた グレンコ・アンドリーさんの『プーチン幻想 「ロシアの正体」と日本の危機』を読み始めてから
第一章 日本人が知らないプーチンの本性
第二章 ロシアは「約束を破るために約束をする」
第三章 ウクライナの教訓〜平和ボケと友好国への盲信が悲劇を招く
と、章立てされているうちの 第一章 日本人が知らないプーチンの本性 まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
サイン本販売情報に反応して
入手していた一冊。
隣国ウクライナからみたロシアとは、ロシア人とは
本書は
” ウクライナ人として持っている知識や自然の感覚から、日本人のロシア幻想、プーチン幻想を解きたいと思います。
強調したいのは、この程度のロシアの理解はウクライナの一般人にとっては常識である、ということです。
少なくとも、本書で書かれたロシアの本質を知らなければ、日本の皆さんがロシアやプーチンとの付き合い方を誤ってしまい、酷い目に遭う恐れが十分にある、ということです。”(p6)
と冒頭の「はじめに」でガツンと日本で生活し抱かれている違和感を示され、エリツィン前大統領からプーチン大統領へ権力が移行する際の経緯などから
” 今のロシアは、大量虐殺や対外謀略を実行した残酷な組織であるNKVD-KGB-FSBに延々と支配され続けている。
つまりロシアは「国家の謀略機関」を所有しているのではなく、「謀略機関の所有する国家」なのだ。
言い換えれば、全体主義体制を維持するために監視や恐怖をもたらす「道具」が主体性を持ち、国家そのものを自分の道具にしたのである。”(p34)
や
” KGB出身であるプーチンは、ロシア人の民族性をよく分かっている。ロシア人は強権的な指導者を好む傾向がある。そして、プロパガンダに流されやすいことも大きなロシア人の特徴である。”(p68)
といった国やロシア国民の特質を指摘するなど、一般的にはなかなかロシアとの接点がなく知ることのないロシアを隣国ウクライナ出身のグレンコ・アンドリーさんの視点で説明されています。
なお、本書は2022年2月に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻前の2019年3月に上梓された著書です。
国際情勢の鍵となる中国との関係
読み進めたところで興味深かったのは
” ロシアは中国に依存しており、中国はかなりの程度ロシア国内に進出している。
普通に考えれば、ロシアにとって恐るべき状態である。にもかかわらずなぜ、プーチンは安心して中国共産党に身を委ねるのか。
疑問に思うであろうが、答えは簡単である。それはロシアが中華秩序の一部であるかぎり、プーチン体制は安泰だからである。少なくとも、中国の手でプーチン体制が倒されることは一〇〇%ありえない。”(p102-103)
とウクライナ情勢に大きな影響を与えるロシアと中国の二国間関係に言及した部分は、現下の国際情勢を読み解く上で大きな鍵といえ、本書を手に取った意義を見出せたパートでした。
目次に目をやると、これからは北方領土問題など対日関係に比重が置かれている様子で、前提知識がある分は理解を深められやすいであろうと、どのような見立てがあるのか中、後半も楽しみです。