橘玲さんが指南する残酷な時代を生き抜くために必要な「たったひとつの方法」とは:『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』読み始め

日本語で「永遠の旅行者」などの訳される「PT(Perpetual Traveler)」なるライフスタイルの専門性を高めるべく

その道の第一人者とされる橘玲さんの著作を初購入。

数えるのも大変なくらいの著作の中から選んだのは『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』。

残酷な世界の実態

本の冒頭「はじめに」で、

” この世界が残酷だということを、ぼくは知っていた。

この国には、大学を卒業したものの就職できず、派遣やアルバイトの仕事をしながら、

ネットカフェでその日暮らしをつづける多くの若者たちがいる。

正社員になったものの、過労死寸前の激務とストレスでこころを病み、恋人や友人にも去られ、果てしない孤独に落ち込んでいくひともいる。 ・・中略・・

二〇年くらい前、新宿に巨大なダンボールハウスの集落があった。その頃ぼくは人生の危機を迎えていて、新宿駅で降りるたびに、

西口改札前広場や、東京都庁への地下道や、新宿中央公園のホームレスを眺めて長い時間を過ごしたこともあった。

そのうちぼくは、ほかにも同じようなひとたちがいることに気がついた。彼らはくたびれたスーツを着ていたり、

工務店や運送会社の制服姿だったり、りゅうとした身なりの紳士だったりした。

目を合わすことも、口をきくこともなかったけれど、ぼくたちはみな同じ空間を共有していた。その空間は、恐怖に満たされていた。

ぼくはホームレスに興味があったわけでも、彼らのためになにかしてあげたいと思っていたわけでもない。

ただ、自分がなぜ彼らに引き寄せられるのかを知りたかっただけだ。ほんのささいなきっかけで金銭も愛情も失ってしまえば、

あとは彼らの隣人として生きていくほかはない。” (1%/百分率は紙の本でいうとのころのページ数/以下同様)

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絶望を乗り切るために出来る事は、ひとつ

橘さんの時代描写のもと、「やればできる」のスローガンを掲げる、自己啓発がブームになっていると指摘。

それに対する橘さんの立場は

” でもこの本でぼくは、能力は開発できないと主張している。なぜなら、やってもできないから。

人格改造のさまざまなセミナーやプログラムが宣伝されている。でも、これらはたいてい役には立たない。

なぜなら、「わたし」は変えられないから。

でも、奇跡が起きないからといって絶望することはない。ありのままの「わたし」でも成功をする手にする方法(哲学)がある。”(1%)

まだ、序章、第1章しか読めていないものの、

” ありのままの「わたし」でも成功を手にする方法(哲学)”

が、本のタイトルとリンクしているとみられます。「はじめに」に続く序章では、

勝間和代さんの著書『勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド』をもとに

” インディペンデントに生きるためには、なによりもお金と能力(専門性)が必要なのだ。” (6%)

勝間和代さんが提示する自立(インディペンデント)に至るフローが

” 知識社会では、勉強すればするほど幸福になれる。

勉強できないのは、努力する習慣がないからだ。

習慣はスポーツにおけるコツ(仕組み)のようなもので、スキルとして伝達可能だ。

自分を勉強へと追い込むスキルを身につければ、誰でも努力を習慣化できる。

努力が習慣化すれば、それが報酬を生んでますます努力するようになる。”

と説明。但し、このことに異を唱えた精神科医の香山リカさんは

” 頑張ってもダメなひとはさらに頑張るしかなく、失敗と自己懲罰の果てしない蟻地獄に落ちていく。

こうして、勝間本を素直に信じた真面目な女性たちがこころを病んでいくのだ ” (7%)

と批判。この勝間ー香山対談は平行線を辿ったそうですが、橘さんは

” 行動遺伝学のさまざまな研究成果から、現在では、身体的特徴だけではなく知能や能力、性格なども遺伝することがわかってきた。

それも遺伝の影響は、ぼくたちが考えるよりはるかに大きいのだ “(10%)

という行動遺伝学の教育によって遺伝的な影響をかげることはできないとする大量のデータが積み上げられている事実を指摘。

橘さんは、これらの事を総括して、反発を抱きながらも

 ” 本書では、(中略) 「不都合な真実」を受け入れることにしたい。

知能や性格は「運命」のようなもので、努力によっては変わらないのだ。” (14%)

との立場を表明。

” 「やってもできない」という事実を認め、そのうえでどのように生きていくのかの「成功哲学」をつくっていくべきなのだ。”(14%)

と、立場を定めるに至った経緯を説明しています。

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労働市場で評価される能力、評価されづらい能力

「能力は向上するか?」と題された第1章では、まず、アメリカの認知心理学者で教育学の大家であるとのハワード・ガードナーの

” ガードナーによれば、知能は身長や体重のように単純な検査で測定可能なものではない。

こころはさまざまなモジュール(部品)が組み合わされてできていて、それぞれのパーツがお互いに影響し合っている。

『MI:個性を生かす多重知能の理論』(新曜社)において、ガードナーは人間に固有の八つの知能と一つの候補を挙げている。

① 言語的知能:言葉への感受性(詩人、小説家)。目標を達成する際に言語を用いる能力(政治家)

② 論理数学的知能:問題を論理的に分析したり、数学的に処理する能力(科学者、コンサルタント)

③ 音楽的知能:音楽的パターンを取り扱う能力(音楽家)

④ 身体運動的知能:問題解決のための身体を使う能力(運動手、外科医、技術者)

⑤ 空間的知能:広い空間のパターンを認識して操作する能力(パイロット、建築家)

⑥ 博物的知能:世界を分類して理解する能力(博物学者)

⑦ 対人的知能:他人の意図や欲求を理解する能力(教師、セールスマン、俳優、宗教家)

⑧ 内省的知能:自分自身を理解し、自分の生活を効果的に統制する能力

⑨ 実存的知能:宗教的・神秘的体験を位置付ける能力(宗教家、芸術家)。暫定的に提案された。” (15%)

と、人に備わる資質を9種に分類した上で・・

” ぼくたちの暮らす市場経済のルールは、「働いてお金を稼がないと生きていくことはできない」というものだ。

労働市場という大きなマーケットがあって、会社や取引先や消費者が各自の資力や能力(品質やサービス)に応じてお金をやりとりする。

ところがここに、大きな問題がある。市場は、いろんな知能を平等に扱うわけではないのだ。

身体運動的知能や音楽的知能は、衆に抜きん出て優れていないと誰も評価してくれない。 ・・中略・・

それに対して言語的知能や論理数学的知能は、他人よりちょっと優れているだけで労働市場で高く評価される。” (17%)

つまり、

” 市場経済は、そのなかの特定の知能だけを評価する。これでは格差社会になるのも当たり前だ。” (18%)

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アメリカの経済学者ゲーリー・ベッカーの人的資本理論に基づくと

” ひとは誰でも働いておカネを稼ぐ能力を持っていると考える。これが「人的資本」で、

ぼくたちはみんな人的資本を労働市場に投資して利潤(報酬)を得ている。 ・・中略・・

人的資本から得られる利益は、投資と同様に、元本とリスクの大きさで決まる。人的資本(元本)をたくさん持っているひとは、

小さなリスクでも十分な利益をあげることができる。逆に人的資本が小さければ、大金を稼ぐには大きなリスクを取るしかない。” (22%)

” 人的資本理論なら、この矛盾はすっきり解消できる。資本主義社会では、金融資本を金融市場で運用するか、

人的資本を労働市場で運用するかのちがいはあれ、誰もが一人の投資家=資本家だ。” (23%)

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当初は・・

” 若いときは金融資本(貯金)が小さいから、お金を稼ぐには人的資本を投資する(額に汗して働く)しかない。

家計に余裕ができて金融資本が増えると、それを株式市場や不動産市場に投資して利益を得ようとする(マイホームは不動産投資の一種だ)。

年をとると人的資本はゼロになる(誰も雇ってくれなくなる)から、あとは金融資本(年金など)から得る収益で生活するほかない。 ・・中略・・

ベッカーの人的資本理論の登場によって、お金を稼ぐというのはどういうことか、はじめてちゃんと説明できるようになった。

大金持ちからニートまで、ぼくたち「資本家」はみんな、手持ちの資本を総動員し、市場を活用して「利益」を最大化する、

とても複雑なゲームをしているのだ。” (23%)

で、今回の総括的なところで、本書でも重要なパートになると予想されますが・・

” ぼくたちは好きなことに夢中になるように遺伝的にプログラムされて生まれてきた。

能力というのは、好きなことをやってみんなから評価され、ひとより目立つことでもっと好きになる、

という循環のなかでしか「開発」されないのだ。

自分がいったいなにをしたらいいかわからず、「自分さがし」の旅に出る若者たちがいる。

でもこの原理を知っていれば、もう迷うことはない。

向いていることは好きなこと。だったらそれがなんであれ、好きなことの「専門家」になればいいのだ。” (29%)

と、この件に触れると、他の類書で同じ表現を見付ける事ができ、途端に腹落ちする感覚が増します。

なお、念のため

” 好きなことを仕事にすれば成功できるなんて保証はどこにもない。

それでもぼくたちはみんな、好きなことをやってなんとか生きていくほかはない。” (31%)

と、読み手の覚悟も問うています。

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時代を知り、己を知り、そして勝ち抜くために

理解の浅さから4,000字超の冗長なまとめになりましたが(汗)・・

ここまでに関しては、「言語的知能」や「論理数学的知能」に周囲より秀でている自覚がなければ、

時代を勝ち抜くためには、それら秀でた人たちに対してリスクを高く賭けていく覚悟が問われているように解釈しました。

この後、

第2章 自分は変えられるか?

第3章 他人を支配できるか?

第4章  幸福になれるか?

終章 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!

という目次立てのもと、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』が明かされていくものと思います。

次回は中間か読了時点になるのか、未定ですが、コンパクトさを心掛けますm(____)m

長文にお付き合い頂きまして、有難うございました。

 


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