内田也哉子さんの『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』を読み始め計15名(別途、エッセー等)登場するうちの7名までを読み終えたので、そこまでのおさらい。
本書は「週刊文春WOMAN」誌で掲載された対談に加筆、修正が加えられ一冊にまとめられたもの。前半に登場するのは
谷川俊太郎
小泉今日子
中野信子
養老孟司
鏡リュウジ
坂本龍一
桐島かれん
といった各分野で著名な方々(敬称略)。冒頭、本書の土台となる連載スタートが
” 人生の核心的登場人物を失った私は、ありとあらゆる生業の、それぞれまったく異なる心模様を持った人間に出会いたい、と切望した。強風に薙ぎ倒された道しるべを頼りに、時に寄り道をしつつ、行方知らずの放浪の旅に出たのだ。”(p27)
の一文に示されたご両親との別れにあったことを触れられ、本編に移行。
樹木希林さんの
” やっぱり、浮き上がる前から自分の中に、ちょっと過酷な覚悟みたいなものがある人には、魅力があるのよ。そして、そういう人って、なぜか過剰な上昇志向を持っていなくて、逆に独特のゆとりみたいなものがあるの。> “(p56)
という小泉今日子さん評が内田也哉子さんへの縁に発展し、
本書刊行記念イベントに至る道筋が出来たのであろうとの背景に、養老孟司先生回では
”「私が書いた小説『ファザーファッカー』が原作の映画ができるので、もしよければ観ませんか?」
と気さくにお声がけ頂き、連絡先を交換。後日、映画の感想を書いた手紙を送ったことがきっかけとなり、映画の出演者(父親役)でもあり、プロデューサーでもあった秋山道男さんと出会う。その後、まっさらの原稿用紙とモンブラン社のシャープペンシル(私の名の刻印入り!)を秋山氏より贈られ、
「さあ、エッセイを書きなさい」
と命じられた。これが、なんと文章の素養もない19歳の小娘が、とんでもないことに、ついその気になって書いてしまったエッセイ集『ペーパームービー』の出版のいきさつ。”(p98)
と内田也哉子さんの世界観が広くシェアされるようになった(養老孟司先生の東大退官パーティーに参列されていた)内田春菊さんとの出逢いといった個人史は想定していなかった読みどころで、
最も興味深かったのは
” 私の父も母も、基本的に目に見えることより、見えないものを軸に生きていたような節がある。
物事に表と裏があるなら、肉体より魂、建前より本音、理屈より感じることを大切にしていた。
父はよく「スピリットにグッとくる」と、言葉で表さなくても伝わるもの、わかってしまうものがあると言った。母は星占いであろうが、目の前で起きている現象であろうが、人間が感じて表現したことである以上、「まぁ、そうだろうね・・・」とまずはすべて受け入れてみるほど疑いを持たない人だった。”(p118-119)
なるご両親評。 既述の刊行記念イベントで小泉今日子さんが内田也哉子さんの文章力について賞賛されていましたが、
一見対談集かと思いきや(対談相手との交わりを通じて)とりわけ個性的なご両親から生を授かった内田也哉子さんの感性に触れられる感覚を読書中意識させられ、それが冒頭の「放浪の旅」にもリンクしてくると解釈していますが、後半も対談相手からどのようなアウトプットが文章表現されていくのか、プロセスと合わせて楽しみです。