東京都立大学大学院経営学研究科 准教授 高橋勅徳さんの『なぜあの人は好きなことだけやって年収1000万円なのか? 異端の経営学者と学ぶ「そこそこ起業」』を読了。
(2024年)8月に開催された
刊行記念トークイベントに参加し興味を増幅させられ、トーク終了後に入手していた著書。
本書は、
” 今、この社会のどこかに存在する、「好きなことを、自分のペースで楽しみながら生きていくために起業した人たち」を肯定していく。そのために、自営業者とみなされ、経営学の対象から(不当にも)外されてきた人たちを、新しい世界の担い手=ライフスタイル企業家フィールドから発見して、その具体的な行動を「そこそこ起業」として解き明かしていくことを、残りが見えてきた研究生活の中心に据えることにしました。”(p14)
と企業家研究、ソーシャル・イノベーション論を専攻する高橋勅徳さんの研究成果が、事業例を通じ
” オートバイにカフェ、音楽、MTBと自分が「楽しい」と思えることをライフスタイルの軸に据えて、自分が楽しんでいく中で見つけた仲間たちと、楽しみを共有できるようなビジネスを手掛けていく。ここで大事なことは、「楽しい」ことを自ら体現していく(performative)ことです。”(p44)
に、
” 彼らは、会社として売上を伸ばす、市場シェアを拡大していくということには、明確に拒否の姿勢を見せます。彼らは、自分たちの趣味や生き方に共感してくれて、一緒に共感してくれる人たちを「お客様」として受け入れ、大事にもてなします。
何よりも大事なのは、自分たちが「心地よい」と思う今の暮らしを大切にすること”(p30)
といった(そこそこ起業の)要諦とともに紹介されています。
それらが本書〆の「おわりに」で、
“「そこそこ起業=ライフスタイル起業家」という言葉は、「上場からバイアウトで億万長者に!」という1990年代以後に成立した企業家伝説を捨てた時に、実は気楽に生きるには十分な稼ぎ方が、この世にはたくさん存在することを気づかせてくれます。”(p193)
或いは
“「楽園を作る」ために必要となるのは、「自分が楽しむ姿」を見せて、共感してくれる仲間を少しずつ増やしていくこと。そして集まった仲間たちと「もっと楽しくなる」ためのサービスや道具を、自分から分かち合うという感覚でしょう。
だとすれば、「そこそこ起業」のための第一歩として取り組むべきは、自分の趣味や好きなことを、それこそ「あの人は凄い!」と同好の士から思われるくらい、ガンガン遊んで楽しむ姿を見せていき、そこで集まった人をベースに「何ができるのか?」を考えていくことであると言えるでしょう。”(p195)
と腹落ちさせられる形でまとめられており読後感良く、
複数の先行者による実践例と、(日本は後発のようですが)他国では学術的な考察が進んでいる領域とのことで、裏付けされた重みが読書の意義を深めてくれました。