『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』のおさらい編の16回目 〜
今回は第七章の「教育」に関する項目からの抜粋です。
教育システム
” 第一次の小学教育が6年で、第二次の中等教育が6年である。
このトータル12年間のうち義務教育は9年間、15〜16歳までは日本と同じであるが、中等教育は日本でいう中高一貫教育が一般的である。
学校は、公立、キリスト教各派の経営する私立学校が主で、公立学校は原則的に授業料無料である。
私立の学校は、独自に授業料等を徴収し、政府の補助金を受けている。
1年3〜4学期制でそれぞれの学期の間に約2週間の休みがある。また、夏休み(12〜2月)は日本より長く約6〜7週間もある。
授業は大体8〜9時の間に始まり、午後3〜4時に終了する。公立の場合は居住地に一番近い学校に入学する。
教育は州管轄であるので、6州、2特別地域ごとに担当大臣が任命され、独自の教育システムを持ち、運営されている。”(No.3181-3189/数値は電子書籍のページ数)
授業のやり方
” オーストラリアでの教育方針は、知識の詰め込み主義ではなく、生徒の自主独立を養い、演繹的な教育方法で、生徒に学ぶことへの関心と情熱をそそることに重きを置いている。
つまり、生徒の個性、創造性を育てることに力を注いでいる。それだけ生徒が学ぶ選択の幅が大きい。
だから時間割は生徒それぞれ違い、同じ生徒と同じ授業を受けることがまれである。
また、日本のように同学年の学級クラスは存在しない。
日本では授業中静かで先生の話を聞いてノートを取るというスタイルであるが、
オーストラリアの授業では、グループ・ディスカッションがよく行われるので、教室は常ににぎやかである。
またビデオを見たり、発表をよくしたりする。それぞれの生徒が個性創造性を養い、発揮する機会が多くある。
精神不安定、鬱、不登校、いじめ、経済弱者、落ちこぼれなどに対応した教育、資源、システムが整備されている。”(No.3189-3207)
入学方法と卒業
” 大学になれば、私立の3校、国立の1校を除いて、他はすべて州立である。
大学はあくまで専門教育である。日本のように大学ごとの入学試験はなく、入試地獄のような状況はない。
大学入試に関しては、高校の成績と、大学入学資格検定試験の成績で決まる。
それぞれの志願者は自分の成績を考慮してどの大学のどの学部に入学するかを選択し、第三希望まで提出する。だから大体が入学できるシステムである。
日本のように浪人することはほとんどない。また入学した学部、学校が気に入らないときには転部、転校も可能である。
日本のように教養課程なるものはない。文科系は普通3年間の専門教育を受け卒業できる。理系は文系より長い期間専門教育を受ける。
もちろん3年の履修をすべて通ればの話で、実際に大学を卒業する割合はそんなに高くはない。
いろんな理由で卒業できないことが多い。その中でも勉強についていけない割合は高い。経済的な理由で中途でやめることもある。
日本の大学と違ってオーストラリアの大学ではいったん社会に出てから大学に入る学生が多く、25歳以上の学生割合が4割近くもある。
また、39ある総合大学以外の第三次教育に公立、私立の単科大学、職業、技能教育機関がある。
運営は州政府のものが多い。産学共同の事業も日本より盛んである。ここでも30〜40歳台の学生が3割もいる。”(No.3207-3225)
留学事情
” オーストラリアへの留学生の推移をかいつまんで記述すると、1985年に約3万人が、10年後の1995年には4.5倍の13万7,000人、2005年には37万4,000人と、この20年を見ても10倍に増加している。
このうち語学学校などに短期(1年未満)に留学する生徒が26万1,000人で、長期(1年以上)の留学生は11万3,000人であった。
この長期、短期の割合は、過去20年ほとんど変わっていない。
1985年における留学生出身国のトップテン5ヵ国が、東南アジア(マレーシア、インドネシア、シンガポール)と東アジア(香港、日本)で、全体の留学生の44%を占めていた。
2005年には東南アジアと東アジアからの留学生が全体の59%を占めるようになった。
特に、中国からの留学生が、1985年には全体の1%に過ぎなかったのが、2005年には17%を占めた。韓国が8%、日本が7%、マレーシアが6%であった。
大学への留学生の実情を見てみると、2005年に約16万4,000人が大学に入学している。そのうち24%が中国、インドが14%、マレーシアが9%であった。
アジアからの留学生が70%を超えたが、190ヵ国以上の国から留学生が来ている。
日本からの留学生も20年前は年間1,000人であったのが、現在は3万人近くが渡豪している。
語学留学が多く、他に職業訓練専門学校が主で、大学への留学は他のアジア諸国と比べて極端に少ない。
また女性の割合が他国と比べて圧倒的に多いのも日本人留学生の特徴である。2007年には45万5,000人がオーストラリアに留学した。
そして中国、インドからの留学生が全体の40%を超え、両国からの留学生が顕著な伸びを示している。2009年には全留学生の数が50万人を突破した。
世界中で大学への留学生の数が約300万人で、オーストラリアのシェアは6%(この数字は大学生の総数の約17%にもなる)で、日本は約4%(全大学生の3%にも満たない)である。
多くの留学生を受けて入れているのは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツである。
教育はサービス産業で、今後は誘致活動を一層強化しなければ、日本の大学は国際的な競争に乗り遅れるだろう。
サービス分野において教育は、オーストラリアにとって観光に次ぐ外貨獲得の重要な位置を占めている。
政府は海外からの私費留学を教育サービス輸出産業と位置づけ、外貨獲得の手段にしている。
教育からの年間外貨獲得は、2009年に1兆5,000億円を突破し( 17.7億ドル)、伝統的な羊毛や牛肉、小麦の輸出を上回り、金額的にはその合計も超えようとしている。
大学当局はその全収入の15%近くを留学生の払う授業料から得ている。”(No.3252 – 3271)
教育の質を担保する法整備
” 留学生に最高の教育を提供するために法整備も行われている。留学生のための教育サービス法は2000年に施行された。
この法律により、施設、サービスなどの国家基準を定め、留学生がオーストラリアにおいて質の高い教育をうけられることを保証している。
また、教育提供機関が国の基準に則った教育を提供しない場合は、授業料の返還も定めている。
政府の監理を可能にし、法令違反に関して厳しい罰則を科している。
さらに、オーストラリア大学監理委員会およびオーストラリア・クオリティ教育、訓練体制2007を設立し、全国の教育、訓練分野における高い質の教育提供の強化を保証している。
また、留学生の問題解決、サポートなどに関する国家倫理綱領を作成し、そのための基準を制定している。
さらに最近では、、留学生の苦情を受ける専門のオンブズマン制度も導入されている。
このように、海外からの留学生をより促進し、高度な教育、訓練の提供を保証するため、国を挙げての努力のあとがよく見える。”(No.3281、3283)
未来をリード出来るか、国際競争力
本では、オーストラリアの留学生受け入れに対する競争力の高さに対して、日本の体制が脆弱である点に対して警鐘が鳴らされていますが
海外に出て行く方に着目しても・・
“中国からの留学生が、1985年には全体の1%に過ぎなかったのが、2005年には17%を占めた。韓国が8%、日本が7%、マレーシアが6%であった。”
と、割合は中国を除いて、韓国、マレーシアと近似しているものの、中国は母数のインパクトもあり
異質に触れることへの慣れであったり、人脈形成、情報戦といったことで、優位に立ちづらい状況は容易に想像出来てしまう気がします。
それだけ、日本人で外で力を発揮出来る人にとっては時代が味方すると言えますね。
6回に及んだ第七章、来週「現代社会事情」について取り上げてクローズします。