移住の理想と現実 ⑥
” 日常生活における文化的衝突の事例として、五十歳代の女性は次のように自身の経験を話している。
(店で)「これ、三十分前に買ったんですけど、壊れてるじゃない」って言うと、「私が売ったわけじゃないのよ!」って言う。自分で責任を引き受けない。
「でもあなた(大手デパート名)の人でしょ。あなた(大手デパート名)が働いているっていうのは、あなたは(大手デパート名)のrepresentativeだから受けてたたなきゃ」って言ったらびっくりしてました。
それを(オーストラリア人の)主人に言ったらみんなそうだって、警察に行っても責任逃れ、自分で責任を引き受けない。
外資系航空業界に勤め、従業員のトレーニングを行っていた彼女にとって、オーストラリア人の「責任逃れ」の傾向は、日常生活の様々な場面で目についた。
彼女自身の電化製品の返品をめぐるトラブルに見られるように、異文化に育ったがゆえに体験する日常的な些細な衝突は、移住者の立場の個人にとって時にストレスとなる。
これらの経験や感情は、日本人移住者の多くによって経験されるものであり、ビジネスの場面のトラブルにもたびたび繋がる。”(『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』p189)
購入後に不安を抱くことは一般的で値段が高額なほど、その傾向は強くなります。店舗側の対応次第で不安は増幅されるもので、一度嫌な思いをすると二の足を踏んでしまうことになります。
業態間競合の厳しい日本と異なる、テナントが限られるオーストラリアでは悩ましい問題ですね。