レコードチェーンとしてお馴染み、TOWER RECORDS:タワーレコードの創業から破産に至るまでの
栄枯盛衰を描いたドキュメンタリー映画 『オール・シングス・マスト・パス(ALL THINGS MUST PASS)』を鑑賞。
このところのお気に入り、新宿シネマカリテで SXSW TOKYO SCREENING WEEK なる
アメリカでサンダンス映画祭に次ぐ規模との映画祭のミニチュア版?が開催されており、その中で1回だけ上映されるというもの。
本編上映前に、 SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)に関する特別セミナー(トークショー)が開催されたので、その模様は次回まとめたいと思います。
話しを映画に戻して、もともと本作を知ったのは音楽のニュースサイト amass で記事になっているのを読んで興味を持って・・
ただ、記事を斜め読みしており、1回だけの上映とは危うく見逃すところで ^^;
音楽好きが集い、ムーブメントを起こしていった事業展開
売上が最高額に達してから、僅か5年後に破産を申し立てるまでになった光と影、
映画では創業者のお父さんがバラエティストアを営む中で、レコードを取り扱い、
これはビジネスになると、創業者Russell Solomon:ラス・ソロモン(表記は映画の呼称と統一)が父から事業を買い取り、
時代の要請に応え、カリフォルニア州の州都サクラメントからサンフランシスコ、ロサンゼルスと徐々に店舗網を広げて
各地で支持を広げる中、そこには従業員が自由な雰囲気の中で働きながらビジネスを学んでいくという社風で
品揃えの豊富さもさることながら、それまで敷居を跨ぎづらかったレコード店を音楽好きが集まってくるような空間を築き上げてった文化などが丁寧に描かれています。
米国 TOWER RECORDSのドキュメンタリー映画「ALL THINGS MUST PASS/オール・シングス・マスト・パス」
作品に漂う音楽への敬意
監督は、本作が長編デヴュー作となったTom Hanks:トム・ハンクスの息子のColin Hanks:コリン・ハンクス。
どれほどの音楽好きであるか承知していませんが、
Bruce Springsteen:ブルース・スプリングスティーン、Dave Grohl:デイヴ・グロール(Washington DC店の店員だった)、Elton John:エルトン・ジョンなどの著名人を含む、
入念な取材から思い入れが伝わってくる仕上がりで、
日本以外の国では2006年を最後に TOWER RECORDS の店舗名は消え去ってしまったとの事ですが、
TOWER RECORDS でレコードなり、CDなり、映像なりを漁りに行ったり、店舗での作品との出会いを楽しんでいた私のような人間にとっては興味を持つ、或いは必見とも云うべき内容となっています。
TOWER RECORDSの日本と浅からぬ絆
意外であったのはニューヨークに出店するよりも早く、法制度などの困難に直面しながらも日本進出を遂げたこと。
また、レコードに見切りをつけ、いち早くCDのフォーマットに商機を見出し、業容を拡大していったこと。
但し、シングルを軽視したこと、MP3、無料ダウンロード等、時代の変化に後手後手に、
そして多額の借り入れが仇となり、融資と引き換えに金融機関の求めに応じて外部から事業再建を図るべく外部から人材を導入したことが命取りとなり、
TOWER RECORDSに根付いていた独自文化が徐々に損なわれていき、事業を売却していた日本以外の各国の全店舗を閉鎖することに。
アメリカ西海岸発祥の起業が、日本だけ続いた因縁
音楽業界の曲がり角に差し掛かっても、日本では事業が軌道に乗っている状態が続き、
映画の最後で創業者のラス・ソロモンが日本の店舗、タワーレコード株式会社(平和島オフィス)を訪問するシーンがハイライト的に描かれていますが、
不思議な縁というのか、映画で描かれていた文化が日本でだけ残ったところに因縁というのか、救いを感じました。
その他では、店舗等でお馴染み ” NO MUSIC, NO LIFE ” のスローガンは日本で謳われたのが、アメリカ(他)でも採用されていったそうな。
スクリーン公開は今回限りであったようですが、DVDでは購入にレンタル(Amazon, iTunes)もされているようなので、
国内盤の発売が待ち切れず、タワーレコードに駆けつけて輸入盤を入手していたという経験のある方に、
家にずらっと輸入盤が並んでいるという方など、音楽に一方ならぬ熱い思い入れを持っている方々には必見の映画と思います。
また、好きを仕事にしてみたいという人も、「好き」の持つ力がよく映像に表現されており、勇気づけられる内容であるものと感じました。