広がるオーストラリア製品を巡る「代購(代理購入)」
” 2013年、当時学生だったナ・ワンさんは、家賃を稼ぐためシドニーから中国に魚油カプセルを送る副業を始めた。
33歳になったワンさんは今、中国の顧客のためにオーストラリアの食品やダイエットピルを購入するいわゆる「代購(代理購入)」業者の1人として活躍している。
小売りコンサルタントによると、オーストラリアには現在、最大で4万人もの「代購」業者が存在しているとみられている。
彼らはソーシャルメディアやモバイル決済アプリを駆使、中国本土の顧客から注文を取って現地で製品を購入している。
「代購」が最初にブームになったのは西欧で、その当時はグッチのハンドバッグなどの高級品を欧州から中国の買い手に送るといった行為が中心だった。
オーストラリアで今ブームの「代購」は、育児用粉ミルクなどの消費財が対象だ。
中国で食の安全をめぐる懸念が根強いなか、健康志向の強い中国の富裕層は安全なオーストラリア製品を欲しがっている。
A2ミルク(ATM.NZ)などの粉ミルク会社は、「代購」と競合するのではなく共に成長する道を模索、国境をまたいだ電子商取引を目指す動きが見られる。
ワンさんは「中国人はオーストラリアの物が大好き」と話す。「品質が好まれているのね。金に糸目を付けないという感じよ」と語った。
ただ、「代購」が中国本土、もしくはオーストラリアにおいて順風満帆というわけではない。
中国政府は4月、国境をまたいだオンラインショッピングの規制を強化。またオーストラリアでも、「代購」が粉ミルクを買い占めた結果、品薄になったとして強い批判を浴びた。
<地元経済にプラス>
一方、オーストラリアの小売業者の間には、「代購」と組んで売り上げ増を目指すという新たな動きも出ている。
コンサルタント会社、シンクチャイナのディレクター、ベンジャミン・サン氏は「大手ブランドも含めて、皆が(「代購」との提携を)目指している」と話している。
オーストラリアの中小の輸出業者にとって、中国でビジネスをするのはハードルが高いことから、中国市場を専門とするコンサルタントは最近、「代購」と提携するよう助言することが増えているとされる。
ニュージーランドの粉ミルクメーカーで、オーストラリアにも生産拠点を持つA2ミルクのピーター・ネイサン最高経営責任者(CEO)は、「代購」との協力強化を模索していると話す。
「『代購』は地元経済にとってプラスであり、われわれのビジネスにもプラスだ」という。”(出典:REUTERS)
隙間を目をつけた個人がうねりを起こすほどになり、規制、批判といった状況に直面するまでになった「代購」のバイイング・パワーの一端を感じた思いでしたが
品質の差に、価格差に、ビジネスの種になることは身近にあり、隙間から生まれていくことの好例に感じた記事でした。