元外務省主任分析官 佐藤優先生の『世界史の極意』を読了。
(2017年9月)月初に開催された京都合宿前のタイミングで、書店に立ち寄り、扱っているテーマと読みやすさから購入していたもの。
世界史を学んだ者が得られること
序章で、
” あなたがビジネスパーソンならば、もっとも重要な基礎教養の一つは世界史である。と私ははっきり申し上げます。なぜか。
世界史は強力な武器になるからです。
ヒト・モノ・カネが国境を越えてめまぐるしく移動する現在、ビジネスパーソンには国際的な感覚が求められています。
そのためには、外国語を身につけるだけでは十分ではありません。
現下の国際情勢が、どのような歴史の積み重ねを経て成立しているのかを正確に認識し、状況を見通す必要がある。”(p9-10)
と、まず世界史を学ぶことの重要性を説き、
” 若いビジネスパーソンには、過去に起きたことのアナロジー(類比)によって、現在の出来事を考えるセンスが必要なのです。
・・中略・・
いま、「アナロジー(類比)」と書きました。これは、似ている事物を結びつけて考えることです。
アナロジー的思考はなぜ重要なのか。
未知の出来事に遭遇したときでも、この思考法が身についていれば、「この状況は、過去に経験したあの状況とそっくりだ」と、対象を冷静に分析できるからです。
すぐれた作家や著述家は、巧みなアナロジーで物事を解説し、新しい理解の地平を開いてきました。
その意味では、アナロジー的な思考を養うことは、ビジネスにおいても国際的なセンスのみならず、説明スキルを向上させる効果を持つはずです。”(p10)
という出版意図から
第一章 多様化する世界を読み解く極意
第二章 民族問題を読み解く極意
第三章 宗教紛争を読み解く極意
という章立てから本書が構成されています。
3つの柱から大局的に捉える世界史
上記の三章は
” 「資本主義と帝国主義」「民族とナショナリズム」「キリスト教とイスラム」という三つのテーマを集中的に学習することで、
現下の世界のありかたを正確にとらえて、「戦争の時代」を生き抜く知恵を歴史的に探ることが本書のねらいです。”(p26)
という意図が込められ、学生時代、日本史を選択していた自分としては、
” 恐慌は社会的な負担が大きいから、いかにして恐慌を避けるかということが近代の資本主義の課題になっています。もっとも恐慌回避策は戦争です。
アメリカで第二次世界大戦後、本格的な恐慌が起きていないのはなぜか。それはアメリカの公共事業に戦争が組み入れられているからです。
朝鮮戦争、ベトナム戦争はアメリカの公共事業であり、それに協力した日本も、すくなくともバブル崩壊以前は恐慌に近い不況を経験していません。”(p68)
という紐解きに、直近でも
” 私は、このロシア。グルジア戦争後、国際秩序が根本的に変化したように考えます。すなわち、武力によって国境を変更しないという国際ルールがここで綻びを見せたのです。”(p48)
ケーススタディから物事を俯瞰する視座について触れることが出来ました。
また、昨今の世界情勢の要点やキリスト教(p181〜)、イスラム教(p201〜)など、
「今さら」といった基礎的事項で抑えておくべきことが端的に説明されており、教科書的な使い方も可能で(佐藤優先生の著作で)いつもながらに学び多き一冊でした。