先週から読み始め、
数日前の中間記↓と
これまで2回に渡って記事にしていたアップル創業者の一人Steve Wozniak:スティーヴ・ウォズニアックの『アップルを創った怪物 もうひとりの創業者 ウォズニアック自伝』を読了。
お金でもなく、地位でもなく
本を読む前にスティーブ・ウォズニアックについてよく知っていた訳ではないですが、
意外であったのは、思いのほか早々にApple:アップルを離脱していたことで・・
” 自分が作った会社を離れるつもりなんて、僕にはなかった。そんな日がくるとは思わなかったんだ。そのころ、アップルは大きな会社になっていた。
あのころも、そして今も、大きな会社というのはどうも性に合わない。
僕がやりたいのは、気の合った仲間だけの小さなグループで、小さな会社を始めること。新しいアイデアを生み出し、それを形にすること。
あのころ、アップルというアイデアは、もう新しいものではなくなっていた。
・・中略・・
辞めるって話はすぐにも了承されたよ。僕の設計を見たけど、競合する点は何もないとも言われた。がんばれって励まされもした。
それから一週間くらいでアップルを去ったけど、その後もアップル社員としての給料をもらっていた。
じつは今ももらっている。フルタイムの社員がもらう最低賃金をもらっているんだ。”(p375-377)
と、これが1985年頃のことで、引用はユニバーサル・リモコンのアイディアを思いつき、再び創業するための経緯が説明された一文でしたが、
前職のヒューレット・パッカードを退職する際、
” HP社は一生の仕事として続けちゃいけない理由でもあるんですか?」”(p273)
とアップル創業後に同社への専念を求められ、ヒューレット・パッカード社への愛着を示し、
” 僕はやらないって。よくよく考えてみた結果、僕はHP社を残ることにしたって。”(p274)
と一旦固辞していた過去があったにもかかわらず、(本を読む限り)アップルに対する割り切りはあっさりとしたもので、
iPodにiPhoneにアップルが現在の地位を獲得する頃には主力部隊から離脱していたことは、本書を読んで知ったことでした。
それもこれもお金や地位に対する執着がなく、エンジニアに対する強いこだわりで
盟友のアレン・ボームから再度アップルへの専念を
” 「スティーブ、あのさぁ、これ、やるべきだと思うよ。よくよく考えてみろよ。エンジニアからマネジャーになり、金持ちになることもできるし、エンジニアとして始めてエンジニアのまま、金持ちになることもできるんだぜ」”(p275)
と説得を試みられ、ようやく
” 僕はこの一言を待っていたんだと思う。会社組織の末端にエンジニアとしてとどまり、マネジャーになんかなる必要はないんだって。
誰かに言って欲しかったんだ。すぐにスティーブ・ジョブズに電話した。喜んでたよ。”(p275)
といった具合。このようなスティーブ・ウォズニアックの生きざまに対して
日本語版訳者の井口耕二さんによる「訳者あとがき」で、
” 仕事を楽しみ、ジョークを楽しみ、いたずらを楽しむ。人生、とにかく楽しまなきゃ損だとばかりに楽しみまくっている人物である。
本書の中で本人も語っているが、アップルという企業の特色にいろいろな意味で「楽しい」が入る理由は、創業者の片割れであるウォズのこの性格があるのかもしれない。”(p450-451)
と総括。スティーブ・ウォズニアック自身は本書の最終章(第20章 人生の法則)で
” 自信というものは簡単になくなる。自分以外の全員がこうしたほうがいいって言うとき、それに反することをしているときには、とくに簡単になくなる。
自分が正しいのか間違っているのかもわからなくなることだってある。
答えは・・・時間に聞くしかない。でも、客観的に検討する力、そういう自分の力を信じているなら、それは幸せを呼ぶ鍵だと思う。自信を持つ鍵でもある。
僕が見つけた幸せになるためのもう一つの鍵は、誰かに反論し、争う必要はないって気づくことだった。
自分が持つ客観的な検討力を信じるなら、自然体でいればいい。周りの人を説得する必要なんてないんだ。
だから、そんなことに労力をさかないこと。自分の発明はどうあるべきなのか、自分の設計、自分の直感、自分の理解を信じることだ。”(p418-419)
と自身の人生を振り返り、読者へのエールを送っています。
スティーブ・ウォズニアックが実践した人生の楽しみ方
と、本筋的(であろう)まとめは上記のとおりとなりますが、Rock好き、VAN HALEN好きとしては
スティーブ・ウォズニアックが資金(私財)提供することで実現した伝説のロックフェスティバル US Festival の舞台裏に言及した
第17章 僕の「ウッドストック」が出色で、本賞に対しては機会を改めて取り上げてみたいと思います。
本編431ページに及ぶ長尺で、(おそらく)プログラミングの知識、ITに対する理解がないと読みづらい箇所も点在していますが
自分の才能を信じ、周囲への貢献を惜しまず、何より人生を誰よりも楽しんだ人物の生きざまに触れることの出来る一冊で
ページ数に応じた読み応えを実感することが出来ました ^^