春くらいから著書名を耳にするようになって、ちらちらと気になっていた『ビジョナリー・カンパニー』を読み始め。
シリーズ化されている中で、手に取ったのは中でも最も評判良く聞こえた『ビジョナリーカンパニー② 飛躍の法則』
企業の「そこそこ良い」と「偉大」を分つ本質
本著に何が記されているのかというと、
” そこそこ良い実績から偉大な実績への飛躍を遂げ、その実績を少なくとも十五年にわたって維持してきた企業を探し出した。”
⇩
” つぎに、飛躍を遂げられなかったか、偉大な実績を維持できなかった企業からなる比較対象を慎重に選びだした。”
⇩
” 飛躍した企業と比較対象企業とを比較して、この飛躍に不可欠な要因、飛躍できなかった企業との違いをもたらした要因を見つけ出した。” (4%/百分率は紙の本でいうところのページ数/以下同様)
” 偉大な企業への飛躍を遂げた企業として選びだされ、調査の対象になった企業は希有な実績をあげており、転換点から十五年間でみた株式の平均運用成績が、市場平均の六・九倍になっている。
これがいかに素晴らしいかを示すためにあげておくなら、二十世紀末時点の経営がもっともすぐれているアメリカ企業だとされたゼネラル・エレクトリック(GE)ですら、
一九八五年から二〇〇〇年までの十五年間の株式運用成績は市場平均の二・八倍にすぎない。” (4%)
著者のジム・コリンズを中心とするチームが偉大な企業と、比較対象企業の違いを調査する中で、決定的な問いとしたのは
” 「飛躍した企業に共通していて、しかも、比較対象企業との違いをもたらしている点は何か」” (5%)
” この本のテーマはただひとつ、良好から偉大への飛躍をもたらす法則、しかも時代を超えた法則である。” (8%)
というもので、ジム・コリンズは自身を
” わたしの強みは、まとまりのない大量の情報のなかから一貫したパターンを見つけ出し、混乱のなかに秩序を見いだすこと、カオスから概念への道筋を探し出すことだと考えている。” (7%)
” 自分の仕事は時代を超えた法則を見つけ出すことだとわたしは考えている。” (8%)
その条件及び著者の資質から得られたものが、例えば・・
” 飛躍をもたらした十一人のCEOのうち十人は内部昇進であった。” (6%)
” 合併と買収(M&A)は、飛躍をもたらす点ではほとんど何の役割も果たしていなかった。” (6%)
” 飛躍した企業は変化の管理、従業員の動機付け、力の結集にはほとんど注意を払っていなかった。条件が整っていれば、士気、力の結集、動機付け、変化といった問題はほぼ消滅する。” (6%)
といった点が浮かび上がってきて、更に大きな発見として抽出されたのが、分類された中で最高のリーダーシップ。
企業の偉大を実現する「第五水準」とは・・
“良い企業を偉大な企業に変えるために必要なリーダーシップの型を発見したとき、われわれはおどろき、ショックすら受けた。
派手なリーダーが強烈な個性をもち、マスコミで大きく取り上げられて有名人になっているのと比較すると、飛躍を指導をしたリーダーは火星から来たのではないかと思えるほどである。
万事に控えめで、物静かで、内気で、恥ずかしがり屋ですらある。個人としての謙虚さと、職業人としての意思の強さという一見矛盾した組み合わせを特徴としている。” (7%)
これが本書で定義されている「第五水準」と称されているもので
” 個人としての謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる ” (9%)
” 第五水準の指導者は、熱狂的といえるほど意欲が強く、すぐれた成果を生み出さなければ決して満足しない。” (13%)
” 飛躍を達成した企業はすべて、第五水準の指導者に率いられていた。” (10%)
「第五水準(のリーダーシップ)」をまとめると・・
” 第五水準のリーダーシップの二面性
職業人としての意思の強さ
・素晴らしい実績を生み出し、偉大な企業への飛躍をもたらす
・どれほど困難であっても、長期にわたって最高の実績を生み出すために必要なことはすべて行なう固い意志を示す
・偉大さが永続する企業を築くために基準を設定し、基準を満たせなければ決して満足しない
・結果が悪かったとき、窓の外ではなく鏡をみて、責任は自分にあると考える。他人や外部要因や運の悪さのためだとは考えない
個人としての謙虚さ
・おどろくほど謙虚で、世間の追従を避けようとし、決して自慢しない
・野心は自分個人にではなく、企業に向ける。次の世代に一層の成功を収められるように後継者を選ぶ
・鏡ではなく窓をみて、他の人たち、外部要因、幸運が会社の成功をもたらした要因だと考える
・静かな決意を秘めて行動する。魅力的なカリスマ性によってではなく、主に高い基準によって組織を活気づかせる” (15%)
まだ、読んだのは全体の3割で、前半に総括的な記載があり、それだけでも読み応えがありますが、書を読み進めると
” 偉大な企業への飛躍を指導したリーダーは、まずはじめに新しいビジョンと戦略を設定したのだろうとわれわれは予想した。事実はそうではなかった。
最初に適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人がそれぞれにふさわしい席に坐ってから、どこに向かうべきかを決めている。
「人材こそがもっとも重要な資産だ」という格言は間違っていた。人材が最重要の資産なのではない。適切な人材こそがもっとも重要な資産なのだ。” (7%)
といった具体的なプロセスについても分量が割かれています。類書は多くビジネス書の棚に並んでいそうですが
ここまでの感じからすると、分析に用意されたデータが膨大で、ジム・コリンズの着眼点からなされた分析は他書を寄せ付けない次元での領域に踏み込まれていて、ありそうで無かった1冊を感じさせてくれます。