元通産官僚で現在は「改革はするが、戦争はしない」をスローガンに掲げる市民の集まりフォーラム4をリードされている古賀茂明さんと、
菅義偉官房長官の会見でのやり取りで脚光を浴びることになった東京新聞 望月衣塑子さんの共著『 THE独裁者 国難を呼ぶ男!安倍晋三』を読了。
看過してはならない深層
お二人に共通することとして、安倍晋三政権の問題提起、警鐘といった立場がありますが、
PART 1 大胆予測!安倍政権の未来図
PART 2 森友問題とは何だったのか?
PART 3 加計学園疑惑の深層
PART 4 安倍政権の正体
PART 5 私たちにできること
という目次立てのもと、
本の冒頭「はじめに」で、望月衣塑子さんが、
” 行政の私物化が私たちの面前で、当たり前のように行われ、疑惑が噴出しても政府からは丁寧な説明はいまだ聞こえず、第三者の中立的な調査団を作る気配さえない。
人事権を握られた官僚たちは、官邸の顔色ばかりをうかがい、「金額は提示したが、予定価格については言っていない」「記録も記憶もない」と驚く詭弁を弄し、偽りと忖度による行政が継続されているのが現状だ。
本書では、なぜこんなおかしなことが起こっているのかという素朴な問いを、読者のみなさんとともに考え、共有してみたいと思う。”(p4-5)
と(本書の)役割について説明。本編では古賀茂明さんとの対談形式で
” 古賀 日本経済はべつに何も良くなっていません。世界全体が良くなっており、日本は世界経済に対する依存度が相対的に高いから、それで株価も高くなっているにすぎません。
それから、日銀がとにかく株を買うわけですよ。これが株高のもう一つの理由です。朝株価が下がるとすぐに日銀が買いに入る。
中央銀行が株を買うというのは、ついこの前までは「禁じ手」と言われていましたが、日本では「金融緩和のためです」とか言いながら、実は株価対策として実施されているのです。
そうなると、おかしいとは思っていても、買わないと損をするということになって投資家も「買うしかないな」となってしまうわけです。”(p54-55)
と、実感が得られぬ景況感のからくり(の解明?)に、
国会の論点が、働き方改革の問題に移行?し、過ぎ去ったかの感の森友問題の経緯に関して
” 望月 新しい私立の小学校・幼稚園が、土地がないままで申請書類が出てくるのは普通ありえない。これは、まあ前例のない話。
もう一つは資金計画。手持ちの資金が、普通に学校を作る時に比べれば大幅に足りなかった。”(p126)
等、振り返り、古賀茂明さんが官僚構造を説明される中で、不自然な点、伏せられた(であろう)深層について推量、言及されています。
安倍一強と称される時代のアンバランス
全編で322ページに及ぶ分量で示されるさまざまな問題に関して、
意見、見方が異なる点はあれども、国民の関心の低さ、ノーチェックで進んでしまうであろう見通しに危惧を感じさせられたことは重みを伴ってきました。
チェック機能というのか、国会で質されるべき重要事項が、野党勢力が、国民の共感を得られない状況で推移してしまっており、
本書の最後「私たちにできること」で希望の見出し方は示されているものの、在るべき姿にはほど遠く、
民主党が力をつけ、政権交代が起きた頃のような緊張感のあった時期に懐かしさを感じてしまう残念さも、また感じたことでありました。