リチャード・コート駐日大使インタビュー ②
” ――ところでターンブル首相についてですが、アボット前首相と比べると、日本との関係を深めることには特別な思い入れがないように見えます
それは違います。私は両者を共によく知っています。2人とも、日豪関係の強力なサポーターです。
ターンブル首相は今年初めに来日しましたが、全てが非常に成功裏に進みました。
ターンブル首相自身も「日本は真の友人だ」と発言していましたし、安倍首相との協調もうまくいっています。
――個人的な見解ですが、もしターンブル首相が2015年にアボット政権を転覆させていなければ、新型潜水艦は日本が受注できていただろうと思っています。そして日豪の産業協力は、今よりはるかに進展していたでしょう
あの時、アボット政権でも既に、開かれた入札を導入することを話し合っていました。
そして入札したところ、日本とフランス、ドイツが非常に拮抗(きっこう)する価格で応札してきました。
そして最終的にフランスが受注したということであり、首相が誰であるかということとは関係がありません。
適切な入札プロセスが行われたということです。ですから結果は同じだったでしょう。
しかしオーストラリアだけでなく、軍事技術の初の大型輸出を狙った日本も、今回の入札を通じて得た教訓は多かったはずです。
入札に際して日本の企業連合がオーストラリアを訪れて全土を回りました。
新型潜水艦の生産パートナーになる場合に、オーストラリアの製造業界はどんな技術や経験を持っているのか視察したところ、
石油・ガスなどの資源業界を中心に、洗練された生産技術やインフラを持っていることが分かり、そこでオーストラリアに生産拠点を設けることにしたのです。
視野を広げれば、防衛技術に費やせる予算が限られているわれわれ両国は、アジア太平洋での軍事技術での開発協力が可能であることを知ったということです。
潜水艦入札の後、日本はオーストラリアの開発能力を知り、オーストラリアも日本の軍事技術能力の高さを学んだのです。
潜水艦の入札が残念だったとあなたはおっしゃいましたが、私は逆に、日豪の防衛協力が深まる可能性をもたらしたと思っています。
――オーストラリアの政界を見ると、ターンブル首相とアボット前首相の対立が見られます。保守政権にとっては来年の選挙に影響しませんか
まさに、デモクラシー(民主主義)が機能しているということに尽きます。政界でも同じように、民主主義では競争があります。
私は政治の世界に20年間いて、西オーストラリアの首相を8年間務めました。その間、誰かが私のポストを奪おうとしてきたものです。
国内政治についてはコメントできませんが、保守政権はわずかな差ながら優勢で、政府もうまく機能しています。選挙については、どういう結果であれ、オーストラリア人が選択することです。
――日本の政治に目を向けると、政権は現在スキャンダルまみれで、議会もほとんど政策議論ができていません。日本の政治文化について思うことはありませんか
私は日本の国内政治についてはコメントできません。唯一言えるのは、日本とオーストラリアが今までに無いくらい良好な関係だということだけです。
――オーストラリア大使館は今、「オーストラリアnow」を開催しています。日本を選んだのはなぜですか?
オーストラリア政府は毎年、「オーストラリアの今」を紹介するために、一つの国や地域を選んでいます。
昨年はドイツでしたが、今年はオーストラリア人からの日本への関心が高まっていることからも日本を選びました。
オーストラリア人はスポーツが好きですから、19年のラグビー・ワールドカップ、20年の東京オリンピック・パラリンピックと、大イベントが続くこともあるのでしょうし、観光客も増えています。
オーストラリア人の間で日本語学習率が高いこともあるでしょう。イノベーション、ライフスタイル、文化・芸術の分野で40イベントを開催する予定です。
――大使としてのミッションは何でしょうか
今の日本とオーストラリアの強固な関係を自己満足で終わらせない、ということでしょう。アジア太平洋で日本企業とオーストラリア企業が協業することを支援したいです。
例えばエネルギー分野は、ガスや石炭、再生エネルギーなどオーストラリア企業が強いですが、アジアではそれらを必要としている国がたくさんあります。
オーストラリア企業は、日本のエンジニアリング企業とLNGの受け入れターミナルなどで事業協力しています。日本企業はLNGの新規生産事業に投資している。
つまり日本はオーストラリアに投資し、他の市場に投資できる。われわれ両国は、その方式を別の分野にも適用できるということです。”(出典:NNA ASIA)
記事に書かれてある一連の流れは(指摘にある通り)少なくとも2020年までは続いていくであろうと、
さらに「オーストラリア now」での日本への取り組み奏功し、
両国間の相互理解が、一段、さらに一段と促進されていくよう願うところです。
オーストラリア ライフスタイル & ビジネス 研究所
上記はFacebookページ「オーストラリア ライフスタイル&ビジネス研究所」の2018年5月15日分の掲載記事です。
オーストラリアにご興味をお持ちの方、Facebookページへの「いいね!」を是非宜しくお願い致します。