荻原浩さんの新刊『逢魔が時に会いましょう』を読了。
先月(2018年4月)開催されたトークイベント時
(荻原浩さん)ご本人から「もうすぐ出ます」といったお話しがあり、
内容を楽しみにしていたもの。前作は、家庭菜園のリアルといったエッセーでしたが、
本作は、
座敷わらしの右手
河童沼の水底から
天狗の来た道
の三作が収録されたもので、一、二番目は過去に発表されていたもののリメイクで、三番目は本作出版にあたっての書き下ろし。
土壇場の准教授と、展望見出せぬ学生が繰り広げる・・
主人公は三作とも共通しており、
” 布目は二十九歳で准教授になったが、その後の研究内容がまったく評価されずに国立大学での職を失って、優秀な学生がいるとはとても言えない真矢たちの私大に移ってきたそうだ。
いちおう自分の研究室を持っているが、就職の箔づけにも研究者としてのキャリアにも役に立たない内容だから、学生は集まっていない。
学術書ではない本を書いているのも教授たちの顰蹙を買っているらしい。”(p200-201)
というキャリアを辿り、『もののけフォーラム』なるブログを開設している民俗学の布目准教授と、
映画監督を目指しながらも、卒業間近になっても活路を見出せていない大学四年生 高橋真矢が助手となり、
布目准教授のフィールドワークで岩手県遠野市へ座敷わらしを・・ 富士山麓の三ツ淵へ河童を・・ 山陰の町 霧北へ天狗を・・
三作のそれぞれで調査しに行く際に繰り広げられる珍道中が描かれたもの。
史実に、ファンタジーに・・
例えば、一作目の「座敷わらしの右手」では
“「いつもこうして食べ物を分けた時にわかるんです。待ってなさい。お客さんのぶんのがもう一個あるから。
一昨日はお団子。きっかり人数ぶん買ってきたのに、一本たりなくて」”(p30)
といった所与の設定に基づいて、ユーモアをベースに物語が展開されていきます。
最初は、この話しどうやって締め括られるんだろう?!と興味を掻き立てられましたが、
そこは荻原浩さんワールド、クスッと笑みを浮かべられる感じの仕上げで
「こう来たかぁー」といった具合、田舎町、自然を舞台にファンタジーが散りばめられたストーリーを楽しまさせてくれます ^^