古谷経衡さんが斬った女性政治家たち、そして問うたマスコミに有権者の責:『女政治家の通信簿』読了

文筆家 古谷経衡さんが、国民にお馴染みの政治家を相次いて評価していった

『女政治家の通信簿』を読了。

登場するのは小池百合子東京都知事、蓮舫元民主党代表、今井絵理子参議院議員など29人。原則、政治家ですが、安倍昭恵総理夫人も番外編で登場。

一人目の小池百合子東京都知事に始まり、進んでいくうち「これはメッタ斬りかぁ・・?!」なんて思っていたら・・

六人目の野田聖子総務大臣では

” 野田は生物学的に出産に苦心したが、その選挙全般、および政策において「女」を売り物に男性に媚びを売るという方式を一切採用せず、

寧ろ常に男性的世界観や価値観なるものに敵愾心さえ抱いているように思える。”(p79)

と高い評価。他では扇千景元国土交通大臣

” 自自、自自公、自公保連立時代と目まぐるしく動く20世紀末期の政治状況の中で、真に扇千景が「扇のかなめ」であったのはわずか数年にも満たなかったが、

「保守」という言葉が単なる党人主義的態度や、果ては陰謀論やトンデモ信仰の代名詞になりかねない現状において、急進的改革を嫌った扇の保守的姿勢はいまなお新鮮に映るのではないか。”(p242)

や、政治家としての評価と直結していないものの田中真紀子元外務大臣

” 彼女の知性に富んだ語彙の選定、発音、息継ぎ、間の取り方、あらゆる話し方にとてつもないセンスを感じた。

・・中略・・

仮に田中真紀子が政治の世界に進んでいなくても、この方は芸能か評論か作家か、いずれの分野で頭角を現して有名人になっていた人であろうと思った。”(p230)

太田房江元大阪府知事など、一部では肯定的評価も見られます。

全体では、

” 私はいまの日本の女性議員を巡る問題には、マスコミの責任が大きいと考えているんです。

小池や山尾ばかりを取り上げて、地道に活動を続ける地方議員にまったく注目しない。光を当てたとしても「美人すぎる市議」ぐらいでしょう。”(p262)

とマスコミの問題に、

後半、掲載されている(古谷経衛さんと)舛添要一前東京都知事との対談では

” 舛添 まず女性候補というだけで投票する有権者がいる。加えてルックスがある程度よければ、さらに票が増える。東大卒、元弁護士、元官僚という肩書きでさらに票の上積みが期待できる。”(p245)

と有権者の問題に言及しつつ、

伊藤詩織さんが性犯罪被害をマスコミを介して公にした際、

“本書に登場する女性議員は、地盤があり閣僚経験があり知名度がある。もう十分に優位な条件が整っているのに、男性的価値観に追従して媚びへつらっている。

無論、そういった体験がないのなら面従腹背の理由はないが、人権侵害に窮する国民を、まして同性の議員が救わんとしないのは理解に苦しむ。”(p284)

そして、

” 異常に女性議員が劣化した原因を彼女たち自身が認識する必要がある “(p267)

と、女性議員の意識に大いなる問題意識を示されています。

政治家を選ぶのは国民なり

指摘されてみると・・

自分自身も有権者の一人として投票行動にまで結びつかないものの

外見を人物の評価に絡めたり、政治家としての資質とは別途の部分で評価を下している部分は身に覚えがあり、

本文の記述を引用すると

” 女性議員の比率が世界193か国中、163位(IPU調査)”(p266)

と、世界的に低水準で、女性議員に限定されたことではなく、そこかしこで政治に対する不満が充満している状況ですが、

有権者、国民の意識も大いに問われているように感じ、重い現実を見せられた思いと同時に、興味深い分析が散見され、思いのほか学び多き一冊でした。


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