先日、惜しまれながら現役引退を表明した吉田沙保里さんの『迷わない力 霊長類最強女子の考え方』を読了。
引退記者会見を見て、吉田沙保里さんへの関心が高まっていた折、別件があり立ち寄った書店で、
サイン本の販売を知り、「!」となり、購入していた経緯。
迷わず突き進んだお父さまの教え/レスリング道
本書は
Part I 霊長類最強女子にきけ!
1 霊長類最強女子の「人生」相談室
2 「仕事」の悩み相談室
3 「恋愛」の悩み相談室
Part II 吉田沙保里の勝利の方程式
4 勝ち続けるために何をすべきか
5 ルーティンは私には不要
6 初公開!吉田家の教え
おわりに 吉田沙保里にならなくていいよ
といった章立てのもと、吉田沙保里さんが
” 私の得意分野であるレスリングのことから人生相談まで、筆の向くまま気の向くままって感じです。”(p139)
という思いで上梓された著書。
偉業を支えた人間性
オリンピックの時以外、なかなか注目を浴びることのないレスリングながら
国民的な人気を獲得して、国民栄誉賞を得るにまで至ったのは吉田沙保里さんの人間性があってのことと考えていますが、
そこには
” 子どものころからずっと私は、父の目の届くところでレスリングをやってきました。
学校が終われば走って帰ってきて自宅の道場で練習。週末は出稽古か大会ですから、休みなんてありません。
大きくなるにつれて、ウチは友だちの家とだいぶ違うことが薄々わかってきましたが、
だからといって友だちみたいに、休みに日には遊びに行きたい、もっと自由が時間がほしいなどと言ったことはありません。
ウチはウチ、ヒトはヒト。そして、ウチすなわち吉田家の中心にあるのは、いついかなるときもレスリング。それが父の揺るぎない考え方でした。”(p77)
「絶対」というお父さまの教えがあり、その徹底ぶりたるや
” いまでも忘れられない出来事があります。全国大会を一ヶ月後に控え、気合が入りすぎたのか、私は練習中に左首を脱臼骨折してしまったのです。
緊急手術を受け、手首の折れた部分を三本のボルトで固定し、さらに全体をギブスで覆われたため、左手は動かすこともままなりません。
・・中略・・
ところが、父はそんな私の姿を目の前にしながらこう言ったのです。
「片手でも戦える」
私は耳を疑いましたが、父は平然としています。もちろん、反論の余地などあるはずもなく、これで強行出場が決まりました。”(p78-79)
という次元。それを受け入れ、付いていった吉田沙保里さんの素直さも見事と思いますが、
人間性の方も、
” 悩むなら決める前じゃなくて後でしょう。”(p28)
という性格で、例えば恋愛に関して
” この人いいな、つきあいたいなと思ったら、私なら即、告白です。ふられたらどうしようとか、それは少しは考えますよ。
でも、そうなったらそのときはそのとき。あれこれ思い悩んでばかりいたら何もできなくなってしまいます。
それに、告白するときはたいてい「この人も私のことが好きに違いない」と思っています。
だって、私のことが嫌いだっていうオーラを出している人を、わざわざ好きにはならないでしょ。もう恋愛に関しては、究極のプラス思考です。”(p62-63)
であったり、印象的、吉田沙保里さんの人間性が伝わってくるのは本書結びの「おわりに」での
” 生まれ育った環境も、顔も、体形も、性格も、年齢も人それぞれ、すべてが同じ人なんてどこにもいません。
それなのに、どこかにただひとつの答えがあるように錯覚して、あちこち正解を追いかけては、これも違った、あれも違うとため息をついている人が多いような気がします。
自分の正解は自分で見つける、人と違っていたって気にしない。それでいいんじゃないでしょうか。
「本を読んだけど、沙保里さんみたいにはできませんよ」
それでよし。”(p140-141)
アスリートとして、生身の人間として
出版は2016年8月のリオ五輪の直前。内容の一部に当時の状況に沿って記載されたものが含まれていますが、
吉田沙保里さんのすべてを包み込む大らかさに、言葉ひとつひとつの分かりやすさに、
国民に愛されたアスリート吉田沙保里さんの人間性に触れることの出来る一冊です ^^