脳科学者 茂木健一郎さんの『記憶の森を育てる 意識と人工知能』を読了。
「何かあるかな〜」と、サイン本コーナーを物色していた際に見つけた一冊で、
茂木健一郎さんのお名前は長く頭に入っていたものの、著書を手に取ったことはなく「良い機会かな」と感じて購入。
第一部 記憶と意識
第二部 場所と記憶
第三部 神と人工知能
という(大雑把な)章立てで、
もともとは季刊誌『kotoba』連載の「記憶の森を育てる」を土台にまとめられ大幅加筆され上梓に至ったもの。
人工知能、そして人間の知性
結びの「あとがき」まで全299ページ。「(文章は読みやすかったけれども)内容は難しかったなぁー」というのが、率直な感想。
本が出版されたのは2015年10月。
” 人工知能が急速に発達する時代だからこそ、逆に、人間の精神の本来的広さ、可能性が浮かび上がってくると言うこともできる “(p006)
と時代を捉え、人工知能に関する本書での結論的な捉えを後半から抜き出すと・・
” 人間の知性の持つ最も素晴らしい顕れは、自分自身を理解し、世界のあり方を認識する。その力の中にあるのではないか。”(p273)
と読者に訴え、
” お茶でもいれて、風に吹かれながら、他愛もないことを話し合う。絶対に、コンピュータが追いつけない、人間の特権的領域。それが雑談!
何の役にも立たない、何も生み出さない雑談をしている時こそ、人間の世界に天上の喜びが降臨する聖なる時間である。
対話の中にこそ、知性の本質があるのだ。”(p270)
と指摘する一方、
” 人工知能は、人間の脳が追いつかないくらいのスピードで、計算を実行することができる。
そのために、人間に制御不能なかたちで、システムの不安定性や、予想できない動作を引き起こすことがあるのだ。”(p279)
危うさも警鐘レベルで言及。
人工知能、進化の3段階
興味深かった学びは、人工知能が
” 第一が、「オラクル」(oracle)。これは、人間側が何らかの「問い合わせ」を出し、それに対して「回答」を寄せるタイプの人工知能である。
・・中略・・
第二が、「ジーニー」(genie)。これは、つまりは魔法のランプの魔人のことで、願いを示すと、叶えてくれる。
どのように叶えるか、その方法の選択も、人工知能に託されている。
・・中略・・
第三が、「ソヴァリン」(sovereign)。人工知能に「全権」が「委任」される。例えば、依頼者を「幸せ」にするために、必要な行為、措置をとってくれと委任する。
予算や手段など、何らかの制約が課されたとしても、その範囲で何をするかは、人工知能に一任される。
・・中略・・
人工知能は、現時点では「オラクル」型が主流だが、次第に「ジーニー」や「ソヴァリン」型が増えていくことだろう。”(p284)
というように三分類されること。開発が進むにつれ、光とともに懸念も膨らむという構図ですが、
漠然とした興味を抱き続けている脳に、脇目で様子見している人工知能に、
本の包括的理解に至らずも、部分部分、興味惹かれたところつまみ食いといったレベルで、知的好奇心を刺激されたり、迫り来る近未来を読書をしながらイメージさせた一冊でした。