岡田斗司夫さん『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』を読了。
岡田さん本は『いつまでもデブと思うなよ』を読んで以来、以降、『評価経済社会』『評価と贈与の経済学』など
全作と言わないまでも、新刊を楽しみにしている著者で、それは腑に落ちる分析力にありますが、
この本は見事に期待に応えてくれました。
人間の値打ちを決める三つのCとは・・
本書は、就職に直面した学生が主なターゲットとなっていますが、多分に自分と社会が交わる座標軸について考察がなされていて・・
” 人間の値打ちは、三つのCで決まる ー これが最近の僕(岡田斗司夫)の考え。「コンテンツ」と「コミュニティ」と「キャラクター」の三つです。” (p151)
” この社会で生き残るためには、という話題になると、自分の能力を開発するとか、資格取得するとか、多くの人はついつい「コンテンツ」が決め手だと思い込んでしまいます。
だから、「スキルを身につけろ」「論理的な思考力を身につけろ」「プレゼンテーション能力を身につけろ」と、
そんな本が山のように書店に並ぶのです。これが一段落した人は「それは違うよ」と言います。
世の中っていうのは、要するにコネ・人脈だよ・・・・・・ つまり「コミュニティ」の部分に行き着くわけですね。
だから少々の無理をしてでも、何らかのコミュニティにできるだけ多く入らなくては、という気持ちになるのです。
おわかりのとおり、この二つだけではサイクルは動きません。効率が悪い。
最後のピースであり、これがあるからこそ歯車がいっせいに動き出す大切なもの。最初からこれがあったほうが便利なもの。
それが「キャラクター」なのです。
「平凡だけどいい人だ」
これでOK。キャラクターとは、特殊なおもしろキャラというわけではありません。
平凡な「いい人」の上に、ほんのちょっとしたトッピングが載っているみたいな感じで、「いい人なんだけど、ちょっとヘンなところもあって」くらいで十分なのです。” (p158)
一日五分「ほめ」のススメ
絶対数が求められる「コミュニティ」の大きく仕方について・・
” パッと見のせいで「いい人」と思われていない人たち、「イヤな人」「カンジの悪い人」「意地悪そうな人」「冷たそうな人」と思われている人たちが関係弱者です。
そうした人たちに対する処方箋として、「一日五分、〇〇するだけでコネや人脈が増えます!」というツールを紹介します。
単純です。「毎日五つ、人をほめる」
① ほめてツイート。
② リアルでほめて紹介する。
③ ネットでほめて語る。” (p167)
” 一日たった五分でできる「いい人戦略」。それが、ネットとリアル、両方でほめることなのです。
一日五分これをやっていると、徐々に人との関係性が強くなってきて、前に話したコミュニティが充実していきます。
「いい人戦略」をとっていると、自分のキャラクターが「いい人」へと上書きされていくんですね。
「いい人」というのは、最初はつまらないヤツに見えます。どこにでも平凡なヤツはいるのですが、
そんな平凡な「いい人」の上に自分の性格がちょっとだけトッピングされて、魅力的な人へと変貌するんです。
土台はあくまでも「いい人」。” (p173)
目指すは「勇者」という生き方
「いい人戦略」が実践され、更なる目的地は・・
” いったい何をゴールとしてめざせばいいのか? 答えは「勇者」です。 ・・中略・・
「勇者という生き方」って、どんな生き方でしょう?困っている人がいたら、すぐに行って助ける。
これに尽きますよね。そのためには、何でも知っていて、何でもできる必要があります。
つまり・・・・・・その「何でも知っていて何でもできて、いろんな知り合いがいる自分」になるために、
僕たちは仕事をするのです。
いまやっている仕事とか、つらい活動を続けた結果の就職とか、それは目的ではない。収入を得るためでもない。たんなる過程なんです。
仕事サーフィン(=「いい人」だから、次々と私語を頼まれて「仕事サーフィン」ができる。」)で得た知識とか能力とか人脈とか、それらをすべて使って、
ぶらりとどこかに行って自分の好きなことを五〇くらいやって、困っている人がいたら、その人を無条件で助ける。
この生き方こそが、勇者です。そのために、お金は使いきる。
「ゴールドは使いきれ」です。RPG(ロール・プレイング・ゲーム)だと、ある街でゴールドを貯めたら、それをスキルアップのために使ったり、
鎧や武器を買ったりして、すべてを使いきるのが当たり前ですよね。目的はゴールドを貯めることではなく、最後の敵を倒すことなのですから。
いい冒険を続けるために、もらったゴールドは使いきるんです。” (p175-176)
読了後、描かれた世界につながる一歩
といったところが、本の後半に書かれていたハイライト的な部分。良い本に巡り合っても、
現状から本で描かれた世界に架かる橋を見付けられず、本を閉じた途端に、「さて・・」といった心情であったり
現実に引き戻される感覚を抱きがちですが、岡田斗司夫さんの素晴らしいところは、具体策、はじめの一歩が明示されている事ですね。