山藤章二さんのエッセイ集『昭和よ、』を読了。
書店に「何か、出ているかなぁ」と半ば習慣的に立ち寄った際に(本書)サイン本を見つけ、
珍しさに反応して手に取っていたもの。
山藤章二さんと云えば、
“「あなたの仕事ぶりは面白いねぇ。こちらが投げ掛けた文章に対して、思いもかけない絵でお返しが来る。
こんなさしえ家はいままで居なかったんじゃない」と褒めて頂いた。”(p108)
と、これば吉行淳之介さんの山藤章二さん評ですが、引用文にある通りイラストが代名詞。
私も意識的に見ていなかったにせよ、作品の数々に、その作風はしっかり頭に入っているほど。
文で感じる山藤章二さん
で、文章の方というと・・
” なるべく長生きしたいと思ったら、常に多数派に属し、低所得者層に暮らし、目立たぬように、隣人に好かれるように、自己の意見は精いっぱい押し殺して平凡に生きるのがいちばん。”(p5)
或いは
” 芸大受験は失敗した。三回も。芸大側が求める人間ではなかったからだ。健康な精神と教えたことを受け容れる素直な性格の人物とは思われなかったのだろう。
・・中略・・
この拒絶反応が私に大きなものをもたらした。「新しい時代の新しい表現分野」である。”(p116)
と、イラスト同様に独自の視点が社会に、ときにご自身に向けられたり、
そのものの見方にしばしハッとさせられたり、気づきを得られたりしました。
山藤章二 x 昭和なエッセイ集
本書は、
” 私は昭和十二年に生まれた。物ごころがついて以来、私の芯の部分は昭和という時代によって培われた。
いまふり返ると、隠れもなく「昭和の爺さん」である。”(iii-iv)
と自認する山藤章二さんが
” 元号がかわる節目を迎え、平成への思いを綴ろうとしたけれど、脳裏に浮かぶのは昭和の世界ばかりー。”
” 本書では、昭和を振り返りながら、八十二歳のいま思うことを、おなじみの一人語り調で、包み隠さず書き下ろす。
ユーモラスで、とりとめのないようだが、時代を読み解く感性の鋭さが、随所に光るエッセイ集。”
と紹介され、山藤章二さんの頭の中を覗き見るような感覚を得られる著書です。