経済評論家 上念司さんの『経済で読み解く日本史(明治時代)』を読み始めて
第1章 金本位制の時代
第2章 難航する貨幣改革
第3章 経済で読み解く征韓論と日清戦争
第4章 経済で読み解く日露戦争
終章 講話反対から日米対立へ ー 新聞と不平士族の怨念
と章立てされているうちの第3章まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
内包された欠陥
冒頭、金本位制・・
” 政府が発行する通貨の裏づけ資産として、金(ゴールド)の保有を義務付ける制度 “(p12)
について文面が割かれており、
” 金本位制とは慢性的な通貨供給不足を招きやすく、デフレ期待を醸成しやすいという欠陥がありました。
世界経済は数年おきに大恐慌に見舞われ、そのたびに国内には過激思想が台頭します。
最悪の場合、その過激思想を信じる人々が政権を取り、戦争を始める場合もあります。
二度の世界大戦の理由はまさにそこにありました。つまり、金本位制がデフレを誘発し、デフレによって景気が悪化、人々の生活基盤が破壊され、経済的に困窮した人々が過激思想に走る。
これこそが、人類を滅亡に導きかねない世界大戦の真の原因だったのです。
このような金本位制の欠陥さえ知っていれば、歴史教科書を読まなくても、いつ、何回デフレの悪影響が世界を襲ったのかを類推できるのではないでしょうか。”(p21)
といった時代背景について大づかみの捉えが示され、史実が紐解かれていきます。
押し寄せる変化のうねり
前巻(シリーズ第3巻)の⬇︎江戸時代から
変化のスピードが上がり、字面だけを追ってしまうと流れを見失いがちにもなっていますが・・
近代化によって
” 秩禄(註:大名たちの将来的な生活を保障すべく、多額の「年金」を支給する新政府の救済策//p.67)はいずれ処分されるものであるという国民的なコンセンサスは思いのほか早く形成され、新聞紙上には「座食」「居候」「平民の厄介」「無為徒食」といった士族へのありとあらゆる罵詈雑言が並びました。
世間一般の士族に対する目は厳しく、「国家への務めを果たしていないのに租税を消費するのは公理に背く」という見方が大多数だったからです。”(p71/括弧書き省略)
社会的な居場所を失うことになってしまった士族からうかがえる歪みに、
” 当時、日本の安全保障政策においてロシアの南下をいかにして食い止めるかは喫緊の課題でした。
ところが、支那と朝鮮が近代化の努力を怠り、欧米列強に食い物にされ弱体化しています。
こんなことではロシアに簡単に侵略されてしまう。彼等にも早く維新を起こしてもらい、欧米列強に対抗するために近代化を図ってもらいたい。
これこそが日本が支那と朝鮮に託した希望でした。”(p88)
と外から迫り来る危機に、内に外に良かれ悪かれうねりが充満していたことが、よく伝わってきます。
原則と、今、この時と
歴史を学ぶことの意義、「歴史は繰り返す・・」ということでは
” 通常、景気後退局面でやるべきことは金融緩和と財政支出の拡大です。・・中略・・
ところが、松方(註:松方正義)は金融緩和どころか、引き締めを継続し、政府支出を削減し、増税を行うという典型的な緊縮財政を実行しました。”(p135)
の件(くだり)が、景気後退が指摘され増税間近とされるこのタイミングで妙に引っかかったり・・