前回⬇︎に続いて
経済評論家 上念司さんの『経済で読み解く日本史(大正・昭和時代)』読了記(二回で完結)。
知られざる史実 x 経済の原則
今回は、
第3章 【第二次世界大戦前後の日本経済】日本はなぜ大東亜戦争に突入したか
第4章 【日本の戦後復興 その1】焼け野原から「高度経済成長」を成し遂げた奇跡の国・日本
第5章 【日本の戦後復興 その2】最悪の年を乗り越えバブル景気へ
の中から、刺さってきたところを引用すると・・
” 第三次近衛内閣は、対米開戦50日前に政権を投げ出すかたちで終了しています。
日米交渉をぐちゃぐちゃにかき回した挙句、東條英機にすべての罪を擦り付けてしまったわけです。
歴史教科書にあるような「近衛が外交派」で「東條が主戦派」などというレッテル貼りはまったくの嘘っぱちです。
元はと言えば、「支那事変の拡大」こそが、「帰還不能点(ポイント・オブ・ノーリターン)」でした。
そして、これこそがソ連のスターリンが日本を滅ぼすために使った「砕氷船テーゼ」のシナリオどおりの出来事だったのです。”(p189-190)
或いは
” 日本はドイツと違って軍が無条件降伏しただけで、政府は存続していました。
終戦と同時に、アメリカ軍が進駐してきますが、アメリカはあくまでGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)を通じて、日本政府に「アドバイス」するだけであって、ドイツのような連合国による軍政や分割統治は行われませんでした。
とはいえ、その「アドバイス」が、天皇陛下や国民を人質に取り、核兵器による脅迫を伴ったものであったことは教科書に書いていない歴史の真実です。”(p205)
という史実の深層に、
“「物価が上昇しているということは、すでに労働者に購買力があるということ、
それはつまり所得(給料)が増えているということだ」と石橋湛山にツッコまれ一撃で論破されています。
しかも、「物価」と「失業率」は常に逆相関の関係(フィリップス曲線)があるので、物価が上がっているということは、失業も相当程度減っているということになります。
社会全体でみたとき、インフレのほうがデフレよりもメリットがはるかに大きいことは明らかです。”(p142)
と帯にある
” 教科書が教えない「経済の掟」”
が、ストーリーに沿って書かれているところ。
全体的に現代に近くづくに従い経済に関する記載の比重が増し、読解の難易度は上がっている印象ですが、
ポイントは分かりやすく記載されており、ディテールは掴み切れずとも、過程から結果に導かれる流れを失うことなく。
歴史の礎に脈打つ経済
といった具合で、シリーズ第三巻の江戸時代⬇︎から
二週間ほど、明治時代、大正・昭和時代と読み進めてきましたが、
歴史と経済の不可分性に、ちょっとした舵の取り具合によって歴史が書き換えられていたであろう点に、
明治天皇をはじめとする天皇陛下の(実体的な)存在感にと、さまざまシリーズが現代に近づいてくる中で、
今、享受出来ていることの有難さを実感出来た次第。舵取りの難しさは過去に限定されたものではなく、
今も(特に)国外から押し寄せる波にどう向き合うのか、一大局面と捉えていますが、
本シリーズ、長期に及んで経済から紐解かれた日本史は説得力の伴ったものであろうと、
(シリーズ第一巻「室町・戦国時代」第二巻「安土桃山時代」は、七月に読書予定 )
私個人、時事問題に触れる際など、改めて本シリーズに触れて理解を深める助けに活用していきたく思いました。