川村元気さんの『四月になれば彼女は』を読了。
川村元気さんの作品は、先月(2019年7月)読んだ
『百花』に続いて2冊目。
読み始めて「あれ、これ短編集?」と思わされましたが、本作は
四月になれば彼女は
五月の横顔
六月の妹
七月のプラハ
八月の嘘
九月の幽霊
十月の青空
十一月の猿
十二月の子供
一月のカケラ
二月の海
三月の終わりに彼は
という章立てのもと、
婚約中の主人公のもとに届いた元恋人(彼女)からのエアメールを端緒に月別に現在形や回想が繰り広げられていく構成。
ドライなタッチでありながら、月を追うごとに
“「誰かの気を引こうとするときには、人はどこまでも優しく魅力的になれるんです。
でもそれは一時的なものでしかない。手に入れたあとは、表面的な優しさに変わってしまう」”(p207/十二月の子供)
或いは
” 雨のなかを走っていくハルの後ろ姿がよみがえる。あのとき、彼女を追いかけができなかった。
あれほど好きだったのに、ハルをあっさり諦めた。そしていままた、愛していた人を諦めようとしている。”(p246/二月の海)
といったストーリの進行、心情の描写から、読み手の感情を刺激されるシーンが増えていきます。
失いて感じられること
場面描写には映画、音楽、旅先といった要素が具体的に、或いは示唆する形で添えられ
その辺の描き方も個人的に面白かったですが、作中のような現在進行中の身ではないながら、
いろんな感情を突っつかれ、そして考えさせられもしたストーリーでした。