スポーツライター 大友信彦さんが
” オールブラックスが強いことは多くの人が知っているだろう。だが、オールブラックスはなぜ強いのか、どう強いのか、それを生んだニュージーランドがどんな国なのかは、日本ではあまり知られていないと思う。”(p236)
との背景から上梓された『オールブラックスが強い理由 世界最強チーム勝利のメソッド』を読了。
オールブラックスに迫るアングル
本書は、
Chapter 01 ジョン・カーワン
Chapter 02 田邉淳
Chapter 03 トニー・ブラウン
Chapter 04 宮浦成敏
Chapter 05 ルーベン・ソーン
Chapter 06 堀江翔太
Chapter 07 エディー・ジョーンズ
Chapter 08 坂田好弘
Document 01 RWC 2011
Document 02 RWC 2015
という章立て。ニュージランド、オールブラックスに所縁のある人たちに対しての取材等から
オールブラックスの強さの源に、紐解かれていきます。
システム、環境、そして苦い歴史から・・
核心的なことは、
” ニュージーランドでは、各州の協会が、若い選手に、プロになるためのプログラムを組んでコーチングをしている。
U-19などのエイジグレードでプレーしている選手であっても、州代表のトップと同じクオリティのコーチングを受けられるのだ。
対して、同年代である日本の大学生の多くは、ほんの一人か二人のコーチのもとで、昔と変わらないトレーニングに時間を費やしているとブラウンは指摘する。”(p84-85/Chpter 03 トニー・ブラウン)
にあるように思いました。
以前から疑問に感じ関心のあった、オールブラックスが(しばらく)ワールドカップで勝てていなかったことについて、
オーストラリア代表ワラビーズの監督などとしてオールブラックスと対峙したエディー・ジョーンズが、
” オールブラックスの悪い癖として、プレッシャーがかかると、精神的に不安定になってしまうことがあります。
それは、プレーすることよりも、結果を考えてしまうからでしょう。
結果としての勝敗に縛られるあまり、目の前に起こっている現実を楽しめないのだと思います。”(p170)
と過去の闘いぶりから指摘、「そういうことかぁ」と。
但し、
” 「オールブラックスにとって、ワールドカップはあまりにも大事な大会なんだと思う。
その重圧が大きすぎて、これまではワールドカップで負けると、それを深刻に受け止めすぎて、コーチングスタッフも選手もガラッと替えてしまって、
次のワールドカップでまた同じような失敗を繰り返してきた。前回も同じです。その前のオーストラリア大会で学んだ教訓をまったく生かせなかった。
ただし、ニュージーランド協会も、ようやくその重みを理解して、人を替えてばかりいてはダメだと気づいた。
ワールドカップを経験したスタッフが次の四年間も残り、主力選手も残った。ニュージーランドも過去から学び、進化しているのだと思います」”(p194)
と、オールブラックスのレジェンドの一人であるジョン・カーワン元選手は言及し、教訓が活かされ、ラグビーワールドカップ連覇中であることは周知のとおり。
また、オールブラックスが強い理由についてエディー・ジョーンズは
” ニュージーランドの人たちは、あらゆる人が、オールブラックスが勝つことを願って働いて、生活しているということです。
オールブラックスの成績で国の経済まで良くなったり悪くなったりする。
それほど、国民全体にラグビーが浸透しているのは、やっぱり凄いと思うし、それがオールブラックスの力になっている。”(p159)
と分析。
本書の読書を通じて、オールブラックスの歴史に、それだからこそ強いということに触れられたように思います。
ニュージーランドと日本の親和性
本を読んで、全体的にラグビー日本代表とオールブラックスの間には近からぬ距離があるものの
勤勉さとか、意外と多くの共通点があることを感じ、現在、開催中のラグビーワールドカップが盛り上がっていることの一端を感じられたようにも思いました。