東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科 毛利嘉孝教授が、謎多きアーティスト バンクシーの全体像に迫った
第一章 正体不明の匿名アーティスト
第二章 故郷ブリストルの反骨精神
第三章 世界的ストリート・アーティストへの道
第四章 メディア戦略家
第五章 バンクシーの源流を辿る
第六章 チーム・バンクシー
第七章 表現の自由、民主主義、ストリート・アートの未来
と章立てされているうちの第三章まで読み終えたので、そこまでのおさらい。
バンクシーは、初監督作品との『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』をロードショー(2011年)で鑑賞して以来、
存在に、ニュースになれば関心を持って受け止めていましたが、次元としては名前に代表作を数点知っていた程度。
バンクシー who?
本書には、
” 専門家以外になかなか難しくて入っていけない現代美術をある種バカにしてみせることで、現代美術に興味のない人々にも広く受け入れられていると言えます。”(p10-11)
という私のようなアートの世界に軸足を置いていない人間をも巻き込む影響力に、
” バンクシーの作品は、壁紙を作ってその上からスプレーを吹きかけて描くステンシルという手法で作られているのですが、
壁紙さえ作ってしまえば、バンクシーに似た作品や本物そっくりの作品を作ることはそれほど難しくありません。”(p6)
という、いろはのいに、帯に記されている通り、
正体不明なバンシクーの全体像に斬り込まれています。
なお、著者の毛利嘉孝教授は、小池百合子東京都知事が、
都内でバンクシーの作品の真贋が問われる作品をTwitterに投じた際、
” 知事のツイッターのその日のうちにテレビ局から取材を受けて、作品の真贋を問われ、「バンクシーの作品である可能性がきわめて高い」とメディアで答えたのは私でした。
・・中略・・
私は、結局、テレビ東京を除くすべてのテレビのキー局、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、共同通信などの取材を受けて、全てに同じようなコメントを発表しました。”(p5)
という過去を持つ、日本国内のバンクシーに関する第一人者。
突き刺さる攻撃性
そのような中、一つ(一番)面白かったものを取り上げると、
” バンクシーは、セントラル・パークに一日お土産店風の露店を出して、自分の本物の作品を販売していたのでした。
露店では、バンクシーのサイン入りのキャンヴァスの絵画が一枚六〇ドル均一で売られていました。
販売していたのは、帽子をかぶり、薄い色のサングラスをかけたやる気のなさそうな初老の男です。
・・中略・・
よく知られたバンクシーの作品とは言え、露店の映像を見ると怪しいことこの上ありません。
ネットで拾ってきた画像をプリントしただけのように見えます。
六〇ドルという値段設定も、この手のお土産絵画としては微妙に高い気もします。
午前十一時に店を開けたのですが、最初はまったく売れませんでした。
最初に売れたのは午後三時半、女性客が子どもたちのためにということで二枚買ったのですが、それも二枚買うから半額に負けるという交渉の末でした。
結局、夕方六時まで店を開けて売れたのは、四二〇ドル。”(p133-134)
論争を巻き起こすこともアートの重要な役割の一つと耳にした覚えがあり、脳裏に刻まれていますが、
権力に、広く一般(市民)に、アートを介した攻撃的な姿勢が読書を通じてよく伝わり、読書を通じてバンクシーへの興味をより深堀りさせられており、後半も楽しみです。