先週末、サイン会に参加した
経済評論家上念司さんの『経済で読み解く日本史 <平成時代> 』を読了。
タイトルに「経済」が冠され、全302ページに及ぶボリュームから当初1週間程度の読書期間を想定していたものの、書かれている文章の読み易さから3日間で最終ページまで到達。
要点を端的明瞭に
読み易さというのは、
” 実は、平成になって変わったのは日本の構造ではなく、日銀の金融政策だったのです。そして、それに追い撃ちをかけたのが大蔵省の総量規制でした。
変わったのは社会の「構造」なのではなくて、経済政策なのです。敢えて言えば経済政策の変更によって経済環境が大きく変わった。
あの時代に生きた人が誰一人「構造」の変化に気付かなかった理由はまさにここにあります。”(p123)
或いは
” 郵政民営化の本当の理由は簡単です。あのまま続けたら郵貯は破綻し多額の国民負担が発生する可能性が高かった。それだけです。”(p135)
と、捉えるべきポイントが簡潔明瞭に記されていること。
後、本書を通じて考えさせられたのは
” もしこの時、福井氏をクビにして新しい総裁に元審議委員の中原伸之氏を迎えていれば日本の歴史は変わっていたでしょう。”(p199)
に、
” 繰り返し何度でも言いますが、当時の日銀総裁の白川方明氏が無能だったからです。”(p181)
と、歴代の日本銀行総裁の多くの舵取りの失敗に言及されており、その役割の大きさを知らしめられるとともに、なかなか矢面に立たされることのない印象から、
どういう考えの人が日銀総裁に就いていて、理に敵った金融政策が実施されているのかといった視線を持つことの大切さを説かれました。
厳しかった平成、その紐解き
他では、
” リフレ派のロジックはバブル崩壊以降、これまで起こったことを最もよく説明していました。私は「なるほど、これだったのか?」”と膝を打ちました。
ところが、こんな素晴らしい理論を当時の世間の人々は全く受け入れようとしませんでした。
私のような駆け出しの自営業者、しかも経済学のバックグラウンドがない人間ですら理解できたのに、なぜみんなわからないのか? ”(p121)
など、上念司さんの個人史も散りばめられており、当事者の視点で斬られる手法は、これまでの『経済で読み解く日本史』シリーズにはなく、本との距離を近づけられたように実感。
全般、自分自身に馴染みに肌感覚のある事柄が並び、不得手な経済分野を「そういうことだったのかぁ」と、時代の振り返りに発見と、質の伴った読書を出来ました〜