元阪神タイガース横田慎太郎さんの著書『奇跡のバックホーム』を読了。
本書の出版は承知していて興味を持っていたものの「サイン本出ないかなぁ」と物色していた折、
タイミング良くTwitterで情報に触れ、手元に引き寄せていた著書。
嘱望されていた大器
本書は、
” あとで知ったのですが、タイガースは毎年、大学や社会人の即戦力選手を1位で指名し、2位はもっともほしい高校生を指名するのが通例だそうです。”(p77)
と、高校卒業時に迎えたドラフト会議で阪神タイガースから2位指名を受け、
プロ入り後
“「阪神を今後10年常勝チームにするには、軸になるバッターをつくらねばならない。その第一候補が横田です」”(p96)
とミスタータイガース掛布雅之さん(当時育成&打撃コーディネーター)等に将来を嘱望され
迎えたプロ3年目「超変革」を掲げた金本知憲監督に開幕スタメンに抜擢されるも結果を残せず、不退転の覚悟で臨んだ4年目
” 前年の秋口から身体の不調を感じながらも練習を続けてきた僕は、キャンプなかばについに耐えられなくなり、検査を受けた結果、脳腫瘍と診断されました。病気との闘いが始まることになったのです。”(p108)
と病魔に冒され大手術を乗り越え、一時視界を完全に奪われるなどの苦境に追い込まれながら、復帰を信じ懸命の努力を重ねた日々中心に綴られています。
野球の神様が舞い降りたプレー
タイトルの「奇跡のバックホーム」は視力が万全でなく、引退を決断した状況下で行った現役(育成)選手生活最後のプレーが
” 塚田さんが打ち返した打球は、僕の前にライナーとなって飛んできました。よりによって、いちばん見えにくい打球が飛んできたのです。
正直、一瞬思いました。「これが最後のプレーかよ・・・」
それでも、気がつくと僕は足を前に踏み出していました。そうしてボールをキャッチすると、次の瞬間、大きく右足を踏み出し、ダイレクトでキャッチャーに送球しました。”(p167)
以後の展開、
【阪神】横田慎太郎 引退試合で驚異のバックホーム
本人の胸の内を踏まえて振り返りは是非本書を手に取って・・と思いますが、病魔により早過ぎる現役選手生活引退を余儀なくされるも、
“「これであきらめたら、何も進まないぞ。毎日がつまらなくなってしまう。絶対にもう一度プロ野球の世界に戻ってやる!」”(p186)
の思いを胸に懸命に復帰に取り組む姿が周囲を惹きつけ、思い叶わずも
“「病気になって、よかったこともある」
大好きな野球を奪われたのは事実です。こんなに残念で悔しいことはありません。
でも、それまで知らなかった世界を知ることができたし、自分のためにさまざまな人が協力してくれた。
自分が知らないところで、献身的に動いてくれた人がたくさんいました。
そういうことがわかってくるにつれて、「ああ、病気は必ずしも悪くなかったな」と考えるようになったのです。
少なくとも、病気になったことを悔やんでいません。”(p195-196)
と、前向きな横田慎太郎さんの生きざま伝わる内容となっています。
発揮出来なかった才能は惜しまれながら表舞台から遠ざかってしまってから横田慎太郎さんが辿ったその後を知らなかった者としては興味深い内容で、爽快な読後感に勇気得られる著書でした。