またしても岸田奈美さんの100文字ですむことが2000文字で伝えられる日常に惹き込まれた:『傘のさし方がわからない』読了

作家 岸田奈美さんの『傘のさし方がわからない』を読了。

昨年(2021年)企画されたサイン企画に合わせ、年末に購入/送付した本が

出典:岸田奈美のnote(画像は記事にリンク)

2月に返送されてきていた経緯。

岸田奈美さんの著書は、昨秋以来 ↓

<< 2021年9月21日投稿:画像は記事にリンク >> 岸田奈美さんが綴った愛ある日常が心に沁みた:『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』読了

通算3冊目で、巧みな文章表現に魅了、期待しての購入。

100字が2,000字に膨張する日常

その筆致は

” わたしが好きなことを、100文字ですむのにあえ2000文字くらいでズガガガーッと好き勝手に書いたら、おもしろがって集まってくれる人が増えた。それでおいしいご飯も食べられるようになった。”(p218)

と、100文字ですむことが2,000文字で表現される世界、

” まず電車には盛大に乗り間違え、あろうことか円覚寺の真逆の方向へ走り出し。あわてて途中下車したら、反対ホームにつながる階段をすべり落ちて足を盛大にくじき。横田さんにお渡しするはずだったきんつばを、電車内に置き忘れたことに気づき。”(p195)

といった日常で飛び出した事件簿!?が、全編に及んでユーモラスに描かれています ^^

返送されてきたサイン本。入手叶わなかったサイン入り名刺を同封文で所望したところシールを頂きました^^

その中で最も共感を覚えたのは、18篇収録されているうちの「優しい人が好きだけど、人に優しくされるのがおそろしい」と題された作で、

” 世にあふれる漫画本も、トレンディなドラマも、そこらじゅうで流れてる歌も、友情はいいぞと教えてくれているのだから。

そうはいわれても、思い当たる友だちがいない。”(p154)

との前段を受けての

” 贈与の受取人は、その存在自体が贈与の差出人に生命力を与える。”(p164)

“「自分が返せる自信のない量の愛を、むやみに受け取ってはいけない」という呪いに。

人に優しくされた。優しくされたら、返さなくちゃダメだ。だけど、ひとりひとりに同じ量を返すには、時間も労力もいる。5人までなら返せるけど、20人、30人に優しくされたら。物理的にとても返せない。”(p163)

といった見方、指摘から

” 贈与は、受け取ることに意味がある。受け取ったわたしにしか果たせない使命があることも、この本は教えてくれた。

贈与は、もらった人に直接返さない方がよい。なぜなら交換になってしまうから。だけど、この世界は贈与でできている。断ち切ってはいけない。じゃあどうすればいいのか。

またわたしが、別の人に贈与をするのだ。好きなときに、好きなだけ。愛と知性を存分にはたらかせて。”(p166)

と出会った『世界は贈与でできている』(=上掲引用の「この本」)からの学びをもとに展開されている着地に腹落ちさせられ、その他、

” 「くるかわからん非常事態のために置いとくより、いますぐ399万円分、家族が思いっきり楽しめる方がええ!いままで我慢してきてんから!お金はまたためる!」”(p26)

という有り金はたいてボルボV40を購入した話し(=そこには深い訳が)に、

” 衝撃を受けた。スマホが割れていることで、恥ずかしいと思えるほど奥ゆかしい人がこの世にいるのか。”(p143)

という受け止めから派生していったその後に・・

誰しも起こりそうな日常に、抱きそうな感覚が、岸田奈美さんのフィルターを通じて文章表現される感じが心地良く、

帯に踊る

” この本を読んで後悔する人はいない。”

本書帯

矢野顕子さんの推薦文も誇張ではないであろうと、

多くの人が読んで楽しめる赤裸々、等身大のエッセイ集であるように感じ、また次作が今から楽しみです。


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