平成ノブシコブシ 徳井健太さんの「デイリー新潮」での連載(「逆転満塁バラエティ」)がまとめられた『敗北からの芸人論』を読了。
先々月(2022年2月)末の本書刊行記念イベント↙️
で、トーク終了後に徳井健太さんがサイン本を手渡され入手していた経緯。
面白いこと、売れること
同イベントで東野幸治さんが徳井健太さんの文章力なり、分析力を評価されていましたが、
” 僕がこの本を書くにあたり一番大事にしているのは、その人が「絶望」を知っているかどうか。毒の沼地で溺れ、足掻き、でも、そこからさも当たり前かのように這い上がり、さらに上へ上へと進もうとする人。”(p79)
という大前提のもと、読むとお笑い界に精通しておらずとも、その芸人(さん)のどこが具体的に凄いのか、
” どんなミスパスも華麗に受け止めるお笑い界のメッシこと麒麟・川島さん、不協和音を生み出す天才・狩野英孝、『テレビ千鳥』研究家の僕。”(p113)
に、
” EXITが放った、伝わりづらかったり通じなかったりする未完成の塊を、千鳥さんが形を整えて視聴者や現場スタッフに投げ返す。その予想外の展開を、ダウンタウンさんがまたさらに形を変え、笑いに昇華させてお茶の間に差し出す。”(p118)
といった物言いでプロからの視点に腹落ちさせられた箇所点在。そんな中、繰り返されていて印象的であったのは
” 芸人は大きく分けて「売れたい」か「面白いと思われたい」かのふたつに分類できる。
僕が考えるに、「面白い」のは才能はもちろんだが、努力でカバーできる部分もある。けれど、「売れたい」というのは、売れていない状況から、本質的な何かを変えなければ手に入らないものだと思う。
そして、「面白くて売れている人」もいる。そういう人たちにはみんな、「売れる」きっかけがある。”(p123)
と「面白い」こと「売れる」ことは分離されのもので、具体的には
” 「売れようと決意した若林くんと、バカでいることを決意した春日」”(p221)
というオードリーであったり、
” 濱家がやっていることはそう簡単ではない。そもそも持っているお笑いの技術の高さはもちろんだし、自身のプライドも一旦破壊しただろうし、失ったプライドを超えるプライドを、もう一度心に据え置かなければならない。
その隣にいる山内もまた、売れるために好感度を捨てた、と、勝手に僕は思っている。”(p234/見出し省略)
というかまいたちであったり、我々視聴者、ファンが見ているのは水面の上の姿、晴れ舞台ですが、
そこに至る過程、苦悩が、同業者 徳井健太さんのフィルターを通じて巧みに分析されています。
これまでコンビ名程度・・ 或いは本書きっかけで知った芸人さんも複数であったことから、書かれてあったことを思い出しながら
また新たな形で、お笑い芸人さんたちの世界観に触れられるきっかけを得られた著書であるように読後感じさせられました。