今週、読み始め、中間記 ↓
とアップロードしてきた佐野元春さんが聞き手を務める対談集『ザ・ソングライターズ』を読了。
中間記後、読み進めたのは
KREVA ー トラックは絵、リリックはその絵のタイトル
曽我部恵一 ー 自分は死ぬまでその曲をずっと歌えるのか?
トータス松本 ー 楽器は詞ができるまで持たない
キリンジ(堀込高樹・堀込泰行)ー 美味しさのなかの苦味と酸味
七尾旅人 ー “自由”のためのデジタル・ツール
中村一義 ー 日常にはありとあらゆるものがある
大木伸夫 ー 作詞は曲の “答え” を探す旅
星野源 ー 共感を超えた先にある繋がり
山崎まさよし ー 「曲が降りてくる」なんて信じられない
なかにし礼 ー 99パーセントの技術、1パーセントのインスピレーション
大瀧詠一 ー 自分の歌詞に意味はない、あるのは韻律のみ
佐野元春 ー ソングライティングとは世界を友とするための道具である
解説 対話がひらく旅の特性 ー 佐野元春と「ザ・ソングライターズ」青澤隆明
で、最終 845ページに到達。
そもそも本書の下敷きになっているのは
” 二〇〇九年一月、立教大学文学部一〇〇周年記念事業の一環として、佐野元春の企画構成による公開講座「ザ・ソングライターズー音と言葉の創作ノート」が始まった。
同時代のソングライターとの対話を通して、「音楽詩」の諸相を探り、創造的なソングライティングの本質に迫る連続講座である。
佐野が長く温めてきたこのアイデアと趣旨に賛同して、多彩なソングライターがゲストとして登場、創作をめぐる真摯な対話をそれぞれに重ねた。”(p842)
というもので、中、後半は
” ー トータスが曲を書く時は曲が先ですか。それとも詞が先にできるんですか。
トータス うーん、大体同時に出てきますね。
ー それはフックのところ? それともバースのところ? それとも全体がいっぺんに出てくるんですか?
トータス ー 多いのは、フックのところがまず出てくるというパターンですね。あとはそのバースの一番の一行目とか。”(p539-540/トータス松本 x 佐野元春)
と(先に出来るのが)詞でも曲でもない同時というパターンに、
” ー 根本的な質問をしたいんだけども、我々の表現に対して、何か別の力が押さえつけて、それを改変しようとする。そうしたこと自体についてはどう思いますか?
旅人 僕はそれはあってしかるべきだし、むしろ外圧がまったくかからないような表現はダメなのかもしれないと思っています。
結局、僕自身あまり褒められたことがないというか、叩かれて叩かれて、それでも自由にやりたかったからやっている。それをやれるツールが今はあるので。”(p623/七尾旅人 x 佐野元春)
という在り方論に、
” 僕は小学生の時ぐらいからいわゆるJポップを聴き出して。Jポップがとにかく好きなんですよ。
なんか、世界中のどこにもない音楽だなと思っていて。こうした「サビ」がある歌って、日本以外にあまりないというか、外国だとAメロがあって、Bメロがあって、Aメロに戻ってくるっていうのが多いですよね。
でもJポップにはAメロがあってBメロがあって、サビがあって、大サビがある。”(p705/星野源 x 佐野元春)
と作曲から派生する音楽論に、約850ページの厚みに沿う濃密な対談集でした。
曲が作られるまでの人それぞれ
締め括りは、佐野元春さんによる
” ソングライターにとって一番頭を悩ませることは何か。それは「言葉」、「詞」、「リリック」です。これまでゲストに来てくれたソングライターの皆さんに訊いても、やはりメロディよりも詞を書くことのほうが難しいと多くの方がおっしゃっていました。”(p831)
総括が11ページに端的にまとめられており、程よく着地させてくれます。
これまで好きなミュージシャンのニューアルバム制作時のバックグラウンドなど創作過程について断片的に知ることはありましたが、様々なアーティストの作曲プロセスについてまとまった形で触れた機会はなく、登場されている方は鬼籍に入られている方も含まれ、資料的価値の高い著書であると読後その重みを実感しました。