(2023年)7月末に開催された本書
出版記念イベントで入手していた著書。
帯に、
> 著書初の実況小説
のコピーが踊りますが、古舘伊知郎さんが念願叶いアナウンサーとして採用され、プロレス実況等で人気を博し、局アナから独立するまでの日々が小説仕立てで端的に綴られています。
そこには
” いちろうが通った立教高校は、埼玉の片田舎にあるキリスト教系の私立高校だった。中庭にはチェコ出身の有名な建築家が設計した大きなチャペルがあり、チャペルの周囲には芝生が敷き詰められた大きな庭があった。
そこに、昼休みごとにプロレス好きが集まって、毎日のように流血の試合を繰り広げる。チャペルの鐘が鳴る下で。ボールペンを凶器に、本当に額から血を流す試合を見せるのだ。いちろうは、興行のプロデューサー兼実況アナだった。
イエス・キリストが見守る中での大流血!
これがまさに、戦う使徒行伝か。
新約聖書208ページ・・・
誰も、聖書なんか勉強していないのだが、一応、週に1回、聖書の授業があるので、ドッカーンと、爆笑が走る。”(p39)
と高校時代に既に才能の片鱗を発揮していた一方で、
” 極度にあがり症のいちろうだが、言葉が詰まらないでよどみなく出てくるのは、実況をする時と、歌を歌う時、それからひとり言を言っている時だ。
・・中略・・
伝えたいことを情熱を持って伝える。その上で、それを一歩引いて、もうひとつの目で自分を見つめてみることで、もしかしたら、自然に吃音も消えていくかもしれない。そんな予感がした。”(p77)
と天賦の才に恵まれた一方、ハンデも抱えながら独自の実況スタイルを確立していった軌跡には少なからず驚かされました。
ご自身のキャリアを
” 自信がなくて、コンプレックス満々で、女にモテたいだけで、エゴで、情に厚くない、いちろうという卑小な人間が、巡り合いの編み目だけをたぐり寄せながら、喋り屋と名乗るようになったのだ。”(p205)
と振り返られており、
” あんな美人に誘われるなんて、股間は人生最大の地殻変動を起こしそうだった。”(p30)
といった散見される古舘さんならではの性的な言い回しに ^〜^;
” アナウンス部は、体育会系で、規律にうるさく、外部の仕事が終わり、会社に戻ると、「ただ今、銀座取材から戻ってまいりました」「蔵前国技館から、今、戻りました」などと部屋いっぱいに聞こえる声で報告する決まりだった。
「いちろう、SMホテル、アルファインの逆さ吊りから無事戻りました!」
そういうのはデカい声で言わなくていいんだよと、先輩に注意される。女子社員から、汚いものを見るように顔をそむけられる。
いつも、ルールにうるさいのに、ふざけんなと思う、いちろうであった。”(p42)
といった赤裸々な感情表現も刺さりどころ多く、エンターテインメント性を帯び、約200頁快調に読了に至りました ^^