俳人 夏井いつきさんと俳優であり映画監督である奥田瑛二さんが
” 俳句を愛する愛する者同士、子規について語り合おうという企画 “(p6)
から三夜に及ぶ対談が書籍化された『よもだ俳人子規の艶』を読了。
(2023年)10月に開催された
発売記念イベントの対象書籍として入手していた著書。
当初、
” 夏井 今回の奥田さんとの対談前の宿題は、子規の句を読んで、純粋に好きだと思う推し十句を選んでくることだったでしょ。”(p159-160)
というフリが、
” 彼がいきなり取り出したのは、傾城や遊女を詠んだ句群。自ら、それらを「艶俳句」と名付け、それら一句一句から広がっていく映画的世界観について熱弁を振い出した。”(p6-7 / 註:彼=奥田瑛二さん)
と想定外の方向に振れてしまった模様。ただタイトルに掲げられた「よもだ」とは、
夏井いつきさんによると
” 伊予の言葉に「よもだ」というのがある。
「あの人は『よもだ』じゃけん」とか『よもだ』ぎり言いよる」とか、そんな使い方をする。「へそ曲がり」というか、「わざと滑稽な言動をする」というか、そんなニュアンスだ。”(p3)
なる語意のようで、何を隠そう本書で焦点を当てられた正岡子規こそ
” 皆さんは、子規の有名な横顔の写真をご存知だろうか。
陰気臭い顔して、真横を向いて、特徴ある後頭部がぐりんと突き出している。あの白黒の写真だ。明治時代に写真を撮ることは贅沢の極みであったろうに、なぜ、横を向く? 誰もがそう思うに違いない。”(p3-4)
という生前のエピソードに代表される「よもだ」そのもので、
既述の選句から奥田瑛二さんにも「よもだ」の資質を見出し、
” 夏井 面白いなあ。同じ句を読み、同じ光景を眺めながらも、奥田さんと私では視点が異なる。奥田さんの俳優・監督としての感性が、俳人としての奥田さんの感性を形づくっているんだろうなあ。”(p87)
といった具合、
個性的な生きざまを貫いた正岡子規を酒の肴?に
” 奥田 俳句は、自分の本質が問われるでしょ。あれこれ苦心して一句ひねり出しても、五七五には結局「素の自分」がさらけ出される。大きい人間、カッコいい人間であるかのように見せたくても、残念ながらそうはいかない。”(p23)
という五七五の奥深い世界について、現代の二人の俳人の熱い語らいが読みどころになっています。