令和ロマン高比良くるまさんが実証を続ける 笑いが起こる絶対式:『漫才過剰考察』読了

お笑いコンビ 令和ロマン 高比良くるまさんの『漫才過剰考察』を先週末の広島往訪時に読了。

NON STYLE 石田明さんの『答え合わせ』と時期を同じくしてお笑いについて掘り下げる本が出版され、サイン本に注目していた折、入手叶えていた経緯。

本書は

” これまで僕がやってきたのは、あれこれ戦術を考えること。

そして、自分を実験台にして実行すること。

それが優勝という形でゴールを迎えた今できるのは、その戦術を他人に伝えること?

そんなことして何になる。お前みたいな奴を増やす気か。

いや、お前みたいな奴多いな最近。

やっぱり何か意味がある。やってやろうじゃねえか。全部書くよ。

何も残らないほど書くよ。”(p13)

M-1グランプリ2023を制し、そこに至る思考のプロセスが紐解かれているもの。

その異次元さたるや、本書に対談が掲載されている霜降り明星 粗品さんをして

“トップバッターってことは、前説とかオープニングの審査員のちょっとしたおちゃらけとかの会場の空気を見て、そのウケ具合で判断したんやろ。ちょっと信じられへん。このセンスはすごい。”(p144)

に、

” お前。お笑い悪魔や。”(p162)

といった賞賛が随所に飛び出すほど。

本編で踏み込まれていく内容は

” しゃべくり漫才ならまず「大テーマ」があって、そこから徐々にボケが挟まって展開し、最後は2人のボルテージが上がっていく流れだったり、漫才コントなら設定に入る瞬間の小ボケや大喜利の答え方、伏線回収的な部分だったり、見れば見るほど次が読めてしまう。”(p31-32)

といった類型の紹介に始まり、

” よくあるのが演者が「台詞を噛んだ」と反省したら、「全然気づかなかったから大丈夫」と言われるケース。だいたい大丈夫じゃない。噛んでなかったときよりウケ量がガクッと減る。

たしかに観客は意識的に気づいてはいない。しかし無意識でその台詞の乱れ、表情の崩れを察知して本来の伝わり方をしていないから笑いが減るんだ。”(p34-35)

という笑いの精度に言及した考察に、

” ボケ主導でボケが客席に向き合う「東」。

ツッコミ主導でコンビが互いに向き合う「西」。

ボケ主導でツッコミが客席に向き合う「南」。

ボケ主導でコンビが互いに向き合う「北」。”(p123)

時代の流れは「北お笑い」だな。と分析する中、地域別にお笑いの傾向を洗い出し、

” それぞれの素材の傑作は出尽くしている中で、それらの「混ぜ方」の勝負になっているんだ。”(p123-124)

なる潮流の見極めに、稀有で且つマニアックな視点で書かれたお笑い考察本ということで印象的な読書となりました。

入手本に書かれていたサイン

本書読了後に開催されたM-1グランプリ2024で令和ロマンは史上初の連覇を果たすことになりましたが、その偉業に裏打ちされる実証結果の言語化が読書中ズシ〜ンと響いてきました。


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